小十郎は、政宗は帯電体質なんだなと優しく頭を撫でてくれました。
ぷしゅー…と音がして、政宗の体のチリチリが消えていきました。
めでたし、めでたし。


ジャイアン、予習する!


 というわけで、小十郎の指揮の下、勉強会が始まった。
 まだ所々黒焦げの佐助はぐったりと真田の向かいの机に伸びている。ダメージは相当だったが、もうこれ以上面倒くさい自体に巻き込まれたくないし、何より抗議する体力も残っていなかったから、黙っていた。
 どちらにしろ、泣き寝入りは今の佐助にとって最も適切な選択であったと言えるだろう。恋に生きるジャイアン様は、度重なる妨害に酷くご立腹なのである。
「小十郎、小十郎!ここまでできた、合ってるか?」
 友人であろうと邪魔は邪魔!今も完全に意識から真田や佐助の存在をシャットアウトして、小十郎にぺったりとくっついて机に向かう様は、まるで昼ドラにおける妻子持ちの男に迫る若き愛人の如くあからさまだ。
 ちなみに、佐助はその手のドロドロ愛憎劇が結構好きなのだが、実際この空気の中に叩き込まれてみれば、もう休日にせんべい片手に昼ドラなんて、二度と楽しめそうになかった。
 これからは純愛モノにしよう。時代は韓流と携帯小説だよ!
 オカンの悲壮な決意をよそに、小十郎と政宗は仲良く額を付き合わせてノートを覗き込んでいる。政宗の方は、解答を見るフリをして、小十郎の色の薄い瞳に見惚れていたりするのだが。
「……うん、合ってる。なんだ、これなら家庭教師なんて必要ないでしょう?」
「そんなことねぇよ、小十郎が見ててくれるからできるんだ。」
 政宗は本日の宿題をサクサクと進めながら、時折小十郎がちゃんと自分を見ていてくれるか確認し、その度に誉められては嬉しそうに目を細めて、また問題に向かう。
 実のところ、今まで政宗は宿題や予習課題をきちんとやったことがなかったので、政宗の言うことは確かなのであるが。
 そんなことはもちろん知らない小十郎は、これもまたいつもの構ってちゃんだと思ったようで、
「なら、俺も厳しくいきましょうか」
 困り顔で微笑みつつ、次の課題を政宗に指示した。

 一方、真田は困っていた。毎日あって進度が早いからと最初に手をつけた数学の宿題の、最初の問題でつまずいたからだ。
 うーむ、腕を組んで唸る。ここは今日授業で例題をやったばかりで、つまりは教科書の構成的に言っても、その例題で使われている公式を当てはめるだけで解けるはずなのに。
 じっと自身の解答を見つめても、わからない。教科書を明かりに透かしてみても、秘密の暗号もない。一応補足、彼は真剣です。
 そのときふと思い出したのは、中学時代、目敏く試験問題のミスを指摘する幼馴染の姿。
「…………っは、分かり申した!片倉殿、この問題、印刷ミスでござろう!!」
 自分はちゃんと公式を当てはめてやっているのに、それでも解けないということは、これはもう問題にミスがあるに違いない!!
 真田は拳を握って訴えた。開始50分唸り続けた末に気付いた真実の感動を、共に分かち合いたくてたまらない。今にもおやっかたっさばぁああ!!!と殴りかかってきそうな勢いである。
 小十郎は正直この暑苦しさが鬱陶しかったが、やる気は評価できるので、身を乗り出して真田の解答を眺めた。
「ん……?」
 問題文を見て、また解答を見て、またまた問題文を。何度か往復した視線がノートのある一点上で止まり。

「さーーーなーーーだーーー、てめぇちょっと面貸せやゴルァ!!」
「!?な、何でござるか、痛い痛い髪を引っ張らないでくだされ片倉殿ぉおお!!?」
 一房だけ長い髪ごとガツンと後ろ首を掴まれて引きずられる真田の声が、段々と遠くなりピシャリとドアが閉められて。

「何が印刷ミスだお前はbとdの区別もつかねぇのかあ゛ぁ!?話になんねぇだろうがてめぇ俺に指導仰ぐならせめて最低問題文ぐらいまともに読めるようになって出直せやぁ!!!」

 廊下いっぱいに響いて届く、ドスのきいた声と、物騒な物音。
 聞こえていたが、佐助は動けなかった。なんかもう色々悲しくて仕方なかったので。ついでにちょっとの間も我慢できないジャイアンの八つ当たりに遭いたくもなかったので。
「小十郎……俺より幸村みたいに馬鹿な方が可愛いのかよ……!?」
    オレサマナニモミテナイキイテナイ。
 馬鹿さならある意味負けてないから大丈夫だよとか、言ったら最後。
    死んだフリだ。空気、空気になりきれ猿飛佐助!!
 既に佐助の中で、小十郎を奪われた政宗は、冬眠前の熊と同レベルの扱いである。


 数分後、戻ってきた真田は某ゴ○ゴ的に気合いの入った表情で、佐助に勉強を教えてくださいお願いしますと土下座していた。相当追い詰められている。
 ジェラシーに膨れていた政宗は、小十郎に予習終わったのか、偉いぞと甘く頬を撫でられて、一瞬で不機嫌も吹き飛び、あぅんと蕩けていた。完全に手玉に取られている。
 そして、どんどんカオスな空間と化していく教室に入るタイミングを逃し続けている、元親は。
「何をしている貴様、通行の邪魔ぞ。散れ!」
 通りすがりの誰かさんに尻から蹴り飛ばされて、派手に教室へダイブするはめになったのであった。


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焼け焦げよ!(友情出演)