ジャイアン、恋をする!


 日頃多々誤解を受けているが、自分は決してヤンキーではない。政宗はそう主張する。
 ヤンキーなんて時代錯誤で迷惑甚だしいイキモノ(と言ったら隣の奴が嫌な顔をしたが、気にしない)っていうのは、白昼堂々授業をサボり屋上で煙草をふかしている、隣のこいつみたいなののこと。
 俺は違う。断じて違う。
 ただ、よく晴れた春の午後だ。昼食もいいかんじに消化されつつあるこんな時間に、うららかな日差しを楽しまないなんて、風流を忘れた現代人の悲しい性だと思うわけで。
「つーかよぉ、ならお前が今吸ってんのは何なんだっつーの」
「ばっかお前、これはあれだろ。多感な青少年期にありがちな大人社会への反抗ってやつ?」
 ぶはー、堂に入った仕種で紫煙を吐き出しながら言う政宗には特に取り合わず、名実共に自覚あるヤンキー代表の元親は煙草を消して喉を潤した。
 大好きないちごミルクで。
「またそんな可愛らしいもん飲んでんのかよ、ちかべのくせに」
「お前そのジャイアン気質どうにかしろよマジで。いいじゃねぇかうまいんだから」
 あとピンクとか可愛くね?へへへ。
「うーわーないないない。ごつい男に許される台詞じゃねーよ見ろこの鳥肌」
「ちょっと一発殴っていいか?」
 見た目はどうあれ、元親は心から可愛いものが好きだ。特技は編み物、レース編みなんてプロ顔負けの腕前の持ち主である。余談だが、子分たちが愛車に下げているお守りは全て元親の手作り品。
 そう言う政宗も料理が趣味で『可愛いお弁当づくりの本』などを買っては研究したりしているのだが、このジャイアンは先の会話でもわかる通り自分のことは棚上げなので、ツッコむだけ面倒くさい。元親は非常に大人だった。
「おー、政宗よぉ、今日集会来るか?どうせ暇だろ」
「何でだよ、決めつけてんじゃねぇよ」
「え?予定あんの?」
「……急に誘われてオトモダチとカラオケ行っちゃうかもしんねぇだろ」
「安心しろよ、お前友だちなんかいねぇじゃん」
「いるよ!佐助とか…………あんま認めたくねぇけど幸村とか」
「変人ばっかだな」
「あと、いつき!」
「ロリコンじゃねぇか」
「Nooooo---------!!!」
 大人な元親は政宗の断末魔の叫びにも動じることなく、至極あっさりとした表情のままヤンキー仲間からのメールに返信していた。

「で、結局来てるしよ。」
「るっせんだよ半裸てめぇいつまでもグチグチよぉおおお!!」
「「「ひぃいいすんません伊達さぁああん!!!」」」
「八つ当たりすんじゃねぇよ野郎共が怯えてんだろ!!」
 見た目に似合わず意外とナイーブな愛すべきヤンキーたち(全員半裸)と共に、政宗は駅前のコインパーキングでたむろっていた。監視カメラが夜しか作動しないという驚きの防犯意識のおかげで、元親たちはよくここで集合するらしい。
「俺ら週末に皆でツーリング行こうって話してんスよ。だから今日はバイクの整備と、ルートの確認で。退屈させてすんませんっス」
 あーとか何とか呻いている政宗だが、その辺にいた元親の後輩からPSPを奪い、更に買いに走らせたアイスを齧り、煙草を銜え。
「shit!dragonのくせに俺に楯突いてんじゃねーよ」
「おめぇら、ジャイアンは放っといてミーティング始めるぞー」
 誰よりもこの場でくつろぐ政宗の姿は、傍から見れば、むしろ元親たちから見ても、完全にヤンキーそのものだった。


 一丸となってミーティングに励むヤンキーたちを放って、喉が渇いた政宗は近くのスーパーへ向かっていた。一人暮らしで料理も好きな政宗にとっては、コンビニよりスーパーの方が愛着がある。
 家とは逆方向のため普段あまり来たことのないスーパーだったが、店頭の広告チラシを見るとなかなか安い。佐助に教えてやろうと一枚いただいてポケットに仕舞いながら。
 ふと、目をやった自動ドア。
 そこから出てきた青年に、政宗は呼吸を奪われた。

 年の頃は、おそらく同じくらいだろうか。
 鋭い眼差し、細く吊った眉、通った鼻筋。割に細身だが引き締まった身体。肩と胸板の厚さ、高い身長。後ろ髪を流すようにかきあげる大きな手。
 そして、左頬に傷。
 目つきと傷が一瞬そっと目を逸らしたくなるオーラを放ってはいるが、額にかかった前髪とエコバッグを見下ろす満足そうな表情が、どこか甘やかな印象を与えて。
 ぽとりと、煙草が指から落ちる。上から下までどこをとっても好みどストライクの青年の色の薄い瞳がこちらを向いた瞬間、政宗は理解した。
    これは正しく、運命の出会いに違いねぇ!!
「Hey!そこのオニーサン、ちょっと待ってくれよ!」
 怪訝な顔で振り向いた彼は、駆けてくる政宗を見て、その眼差しの鋭さを増した。
「……?何だてめぇ、妙な言いがかりつける気なら容赦しねぇぞ」
 かなり堂に入ったメンチ切りに、なぜか政宗の頬は薔薇色。
「coolだぜ……ますます気に入っちまった!」
「は?」
「I’m destined to meet you, my dear!!!」
 がばりとその逞しい右腕に抱きついて、頬にkissを一つ。硬直している青年をうっとりと見つめる。
「俺の名は伊達政宗。Honey、まずは名前を教えてくれよ?」


next to 2

学パロをやってみたかったんです…(笑)設定とかはテキトー。 あくまでゆる〜く、色々なキャラを出しつつやれたらと思います。
ジャイアン政宗様、小政を目指して推して参る!ということで(笑)