こんなに暗いから、絶対誰にも見えない。
人気のない帰り道を、ずっと手をつないで歩いた。
きみの手
玄関先で手を振る昭栄を見送って、二階の自分の部屋に上がる。ぱたんと戸を閉めた瞬間、一気に顔が熱くなった。同時に鼓動は跳ね上がり、汗まで噴出してくる。
なん、なんしとーと俺!?
とりあえず落ち着けと、わたわたと腕を振ってみる。それで落ち着けるはずもなく、勢いよくベッドに沈み込んだ。
右手が、熱い。じっと見つめると、まだ昭栄の手の感触が残っている気がして、更に熱を持った顔を枕に押し付けた。
人と手をつなぐことが、こんなに気持ちのいいものだとは思わなかった。昭栄のゴツゴツした長い指に優しく包まれると、何だかすごく安心する。カズさんの手は大事な手やけん優しくせんとね、と昭栄が笑ったのも、嬉しくて。
今はもうつながっていない手が、寂しい。
「もっと、つなぎたか……」
耳に響いた自分の声に、カズは驚いて眼を剥いた。
な、なん、言っとーと!?俺どげんしたとや!?
叫びだしたいほど恥ずかしくて、枕を抱えたままベッドでごろごろと転がる。暴れる音が聞こえたのか、階下から母親の声がした。
「もう、カズ!こげん遅くに暴れないの〜!はよお風呂入りなさいね〜?」
「わかっとー!」
答えるついでに起き上がって、乱れた布団を直す。全く何をしているんだかと、自分にため息をついた。
ふわふわと、落ち着かない気持ちだ。手をつないで歩いたなんて、思い出すと恥ずかしいのに、なぜか笑い出したくなるほど嬉しい。
付き合うって、もしかしてこげんこつ……?
今まで全く実感がわかなかった。恋人じゃなくたって、好きだということは口にしなくてもわかるし、休日だって一緒に遊べる。選抜練習ではずっと昭栄について歩かれるから、一緒にいることだってできるのだ。
けれど、先輩と後輩じゃ、手はつながない。両想いじゃなかったら、この嬉しさは生まれない。
だけん、好いとーって言うんかな?
恋人同士でなきゃできない、感じられない幸せがあるのだ。「恋人」というのは、それだけ特別なものなのだ。
やっと実感が出て来て、昭栄の気持ちが少しわかる。手をつないだり、二人で歩いたり、遊んだりすることの意味もわかってきた。
二人だけで特別に、同じ幸せを感じるために、一緒にいるのだ。今までと変わらない日常も、この気持ちだけで、全てが特別なものになる。
着替えを手に向かった風呂場で、ふと鏡を覗き込んだ。思わず笑ってしまうくらい、映った顔は真っ赤に染まっている。どきどき、ふわふわして、落ち着かない。
これのどこが「余裕ある」とや?あのアホは……。
自分だってどうしようもないほど、昭栄しか見えていない。浮かんだ言葉に自分で照れて、カズはシャワーを思いっきりかぶった。
カズさん、やっと恋人な認識を持つ(笑)
二人のお付き合いは実質ここからということになりますね…がんばれ昭栄!!