この気持ちを伝えるには、言葉だけじゃ足りない。
それに、気づいてしまった。
シロップ
苦しいほど募った気持ちを、何度口にしても追いつかなくて。カズの手を握った瞬間に、ずっと求めていたものが何か、何となくわかってしまった。
「触れる」ことは、とても気持ちいい。それは今まで知らなかったこと。
「カズさん、手つないでもよか?」
見上げるカズの眉根はいつも通りに寄せられていて、可愛い唇からはいつも通り、
「ダメや。」
つれない言葉ばかり飛び出してくる。
「え〜っ、なしですか?誰もおらんのに!」
「お前すぐ調子乗るけん、ダメや。」
つんと前を向いてすたすたと先を行くカズに、昭栄がむぅと膨れた。早足に隣に追いついて、そのままの勢いでカズの手を握る。
「な、こら!!離さんや!!」
大成功、と思ったのもつかの間で、振り払われた手でそのまま殴られた。頭をさすりながら、ぶすっとふてくされてみせる。
「こん前はあげん優しかったのに〜……」
「だーかーらー、調子乗るけん嫌って言っとーと、アホ!!」
もう一回殴られて、冷えたカズの手はポケットの中に隠されてしまった。
手をつないで帰った日、今までよりずっとずっとカズの心が近くに感じられた。触れ合う指先や手のひらから、心まで溶け合ったみたいな、不思議な感覚。
知ってしまったら、もっと欲しくなる。昭栄はもう一度カズを見た。
「ねぇカズさん、手つないでもよか?」
あきれた顔で見上げてくるカズに、昭栄はねだるように首をかしげる。カズが甘えられると弱いことも、こうしてねばっていれば、
「ったく、しょうがなかな……。」
本当に嫌なことじゃなければ、必ず折れてくれることも知っている。望んでいるのは自分だけじゃないことに、昭栄は嬉しくて笑った。
「えへへ、カズさん優しか〜!」
ポケットから出された手を握って、並んで歩く。温かい自分の手を、カズも握り返してくれる。マフラーにうずめられたカズの顔がほんのり赤いのは、暗がりだってよくわかった。
嬉しい。嬉しい。幸せ。大好きで、幸せ。こんな簡単な方法に気づけないまま、あんなに悩んでいた少し前の自分がかわいそうだ。
「なん、そのアホ面は。だらしなか顔。」
照れ隠しの憎まれ口だって、可愛い。カズなら何をしても可愛い。シロップに浸したみたいな甘さで、昭栄はへらへらと幸せそうに笑った。
「いーんですよ!カズさんしか見てなかも〜ん!」
浮かれる昭栄に、カズもあきれ果てて笑った。
THE★バカップル(笑)