何年経っても、何度でも、この人が好きだと思い知る。
世界一
光を浴びて輪をつくる、その艶やかな髪が好き。
少し長めの髪がかかる、その首も。帽子に隠されたまんまるい頭の形も。
「カズさん」
スタジアムへ向かって階段を上る。前を行くカズを呼ぶと、わくわくを抑えきれない表情でカズが振り向いた。
「うん?」
少し見開くようにして促す、猫みたいな大きな目。言葉数の少ないカズの心を鏡のように映すその瞳は、まっすぐに昭栄だけを見ていた。
あぁ、もう。これで何度目っちゃろーか。
きゅうと胸の奥を甘く締め付けるこの感情は、カズだけが引き起こすもの。それなのにもう何度も何度も、自分でも呆れて笑っちゃうくらいに覚えがあるのは。
「呼んだだけ、です」
「はぁ?」
にへ、と思わず笑って言ったら、カズは眉根を寄せてぷいと顔を逸らしてしまった。照れくささを怒った表情でごまかして、ずんずんと歩き出す。
髪も、首筋も、頭の形も。指先も足もおへその形も、鼻も、唇も、瞳も。
「カズさん」
たった四文字の音の並びさえ。
「カズさん」
「……」
「カズさん、こっち向いてください」
「……」
無言で歩き続けるその肩に、段々力が入っていく。それと呼応して、キャップでは隠しきれない耳が真っ赤に染まった。
本当に嫌ならはっきりと拒絶できるカズが、無視するフリで自分を野放しにしている。それはきっと心のどこかで、自分のこの声がカズの名を呼ぶことを、嬉しく思ってくれているから?
うぬぼれすぎだろうか。期待しすぎだろうか。
「カズさぁん……」
「……〜〜〜!やけん、何って言っとーと!!」
しょぼんともう一度名前を呼んだら、カズは真っ赤な顔で、思いっきりしかめっ面で、それでも振り向いてくれた。三段上から見下ろして、偉そうに腕組みをする、そんな仕種にさえ嬉しくなる。
好きだとか何だとか、あまり言ってはもらえないけれど、それでもいい。
「ショーエイ?」
こうして目を見て、渋々って顔しながらいつもそばにいてくれて、名前を呼んでくれる。生まれてからどれ程の人に呼ばれたか知れない耳慣れた音の羅列も、カズが口にするときだけは、特別。
「カズさん」
「……何ね?」
むぅと不機嫌な顔で、それでもその瞳と声は優しい。だから嬉しくて、嬉しくて幸せで、へにゃりと顔が緩んでしまった。
「カズさん、好いとーです」
そう告げたら、カズは首まで赤くしてうつむいて、ぼそっと一言。
「…………知っとるわ、アホ。」
何年経っても、何度でも、思い知る。
この人が好きだ。誰よりも何よりも特別なあなた。
ただ一人、カズだけに、いつも何度でも恋に落ちる。
終わりない幸せ。底のない喜び。
カズを世界一幸せにしてあげたいけれど、この世界で一番幸せなのは、絶対に自分だ。
昭栄はきっと会う度話す度いつも、カズさんに惚れ直してると思う。すっごい些細なことでも、カズさんならきゅん!
階段で振り向くカズさんは、例の表紙をイメージで。