ジャイアン、星を見る!


 駅前に迎えに現れた小十郎は、やいやい言い合う怪しい七三スーツとマイバッグおかんの二人組を見て、即座に踵を返した。
    どう考えても、関わりたくない。
 ヒトとして正しい反応を示す小十郎だが、災難というのは常に相手から降り懸かってくるもの。今回も当然、
「こじゅうろーーーmy sweet!待ってたぜ!」
「ちょっと片倉さんどこ行くのさヒドイ!俺様にだけこのジャイアン押しつけようったってそうはいかないんだから!」
 降り懸かるなんて可愛いものじゃなく、隕石が追突するくらいの勢いで両側からどんどーん!と衝撃を受けた。

 両腕にしがみついて好き勝手に騒ぐ後輩をぶら下げたまま、家路を向かう。のどかな住宅街を行く不思議な三人組、奇妙な図式なのは承知だが、なんかもうめんどくさい。
 そんな小十郎に構わず、逞しい感触の腕に別々の理由ながら同じくうっとりしていた政宗と佐助は、前方に近づいてきたある家の門前の光景に、きょとりと目を丸くした。

 門の向こう側には、面立ちの華やかな美女。こちら側には、長身痩躯の、背を向けているため顔はよくわからないが、おそらく壮年の男(なんかきのこみたいなのが頭についている)が立っている。
 美女はにっこりと笑んでいて、男は、
「いやいや、卿は実におもしろいな」
 背を向けているのに、いやらしい笑みを浮かべているのがありありとわかる、ねっとりした喋り方。
 政宗と佐助は顔を見合わせて、
(Hey、小十郎!あれは絶対変質者だぜ)
(ああいうねとねとした自己陶酔タイプのオヤジは厄介だよー)
 掴んだ腕を揺らしながら、兄貴分にヒソヒソ訴える。特に政宗は熱心で、
(小十郎、見てろよ!小十郎の近所のお姉さん、キノコの餌食になっちまう前に、俺が助けてきてやるぜ!)
 ギラギラと燃えている。ギラギラしすぎて若干やましい感じはするが、とにかく彼は正義に燃えている。
 そのままひゃっほぅと言わんばかりに飛び出そうとした政宗の襟首を、小十郎が掴んで引き止めた。
(・・・いいから、黙って見てろ)

「卿と話しているとまったく飽きないな。どうかね、今日は私が同伴を申し出ようじゃないか」
「あらぁいやですわ、松永さんもそんなにお暇じゃないでしょう?わざわざ隣町にまで足を伸ばしていただかなくても……たかがキャバ嬢にそんなに気を遣わないでくださいな」
「謙遜する必要はない、私は卿が気に入っているのだよ。」
「ありがとうございます。でもいけませんわ、昨日も一昨日もお店に来ていただいてますもの。たまには家族サービスでもなさったら?」
「卿は実に珍しいことを言うな。売り上げになるのだから、素直に喜べばいいのだ。それに、私にサービスするべき家族などいないのは卿も知っているだろう」
「あら、そうでした?ごめんなさい、忘れちゃってたわ。何にしても、休肝日は大切ですよ」

(・・・・・・小十郎、なんか寒い)
 うふふ、と笑う美女の背後に、氷点下のオーラが見える。笑顔なのに、終始笑顔なのに、なんだかものすごく寒々しい。
 さすがのジャイアンもちょっと怯えるその笑顔。おそらく普通の人間なら、ここで震えて引き下がっているだろう。
 しかし、きのこオヤジはめげなかった。
「欺瞞欺瞞!飲めばいいのだ、どうせ人はすぐに死ぬ!喜びたまえ、卿にはナンバーを贈ろ・・・」
「帰れっつってんだこのアル中オヤジがぁ!!!」
 おそろしくドスの効いた声。
 きゅぴーんと輝くきのこ型の星。
 めげなかった結果、唸るこぶしに飛ばされて、きのこオヤジは宇宙の彼方へと還ることになったのだった。


 ゆるくウェーブした長い髪をうねらせて、怒りもあらわにパンパンと手を払う美女。立ち尽くす少年たちを見つけて、彼女の細い眉がくわっと吊り上がった。
「小十郎!あんた今までどこほっつき歩いてたのこのバカ弟!!」
「・・・ただいま。今日手伝いにくる後輩迎えに行くって言ったろ」
「喜多おねえさん、こんにちは!猿飛です、よろしくお願いします!」
「あら、でかしたわ小十郎。オカンもいらっしゃい」
 ぴっときれいな直角に頭を下げた佐助と、頭は下げないまでもちゃんと挨拶をする小十郎にご満悦の片倉姉・喜多の視線が、政宗に。
 チク、チク、と数秒。

「 あ い さ つ !!!」

 美女のあまりの迫力に小十郎の後ろで真っ白になっていた政宗は、『偉大なる喜多お姉さまに挨拶をしなかった』罪で、問答無用の鉄拳制裁を受け。
「う・・・・生まれ変わったら、鳥に・・・」
「政宗ーーー!」
 息子を徴兵されたオカンそのままの佐助の叫びに見送られ、政宗はぴよぴよと巡る星とひよこの世界へと旅立った。


そんなわけで、アンケート反映新登場・栄えあるお一人目は松永danzyo久秀さんでした〜!
喜多さんの夜勤先の常連で、隣町の大きいお屋敷に住んでるけど暇なので日々片倉家に押しかけてくるstkおじさん。
……松永さんをジャイアンで出すなら、こういう方向しかないと思っていた(笑)
かっこいい松永さんがお好きな方、申し訳ありません!(でも柊の頭の中の松永さんはこんなかんじです!←だめだこりゃ笑)