女教師むねさまと転校生小十郎シリーズ。
・にょたな上に年齢逆転。
・ネイルやらピアスやらド派手ケバケバ女教師。
・に迫られまくるヤンキー疑惑なマイペース転校生。
・の家族なんかも巻き込んだドタバタギャグ。
書いてる本人だけが異常に楽しんでる(笑)シリーズですので、ご注意をば!
○センセイからのご褒美。
夕暮れに赤く染まる放課後の教室。遠くから野球部や陸上部の掛け声が聞こえてくる。
クラスメートは皆もう帰ってしまったから、この空間には二人きり。
「なぁ、小十郎……」
きし、とわずかな音をたてて、彼女は小十郎の机に腰掛けた。ゆっくりと組んだ足、深いスリットの短いスカートは際どく捲り上がって、うっすらと肌を透かす黒いパンストに包まれた太ももが晒される。
「先生」
「No……悪い子だな。政宗って呼べよ、いつも言ってるだろ?」
左頬の傷をゆるゆると撫でながら、殆ど耳元で囁くような距離で届く声は掠れていた。
転校してきたばかりの小十郎は、その見た目で当初教師陣から随分敬遠されていたけれど、先の中間では学年でもトップ3に入る好成績を叩き出した。担任である政宗はそれはもう鼻が高くて。
「この学校じゃ初めての中間、がんばったいい子にはご褒美をあげないとな。」
男の劣情を煽るような濡れた唇、広く開いたシャツの襟元から覗く白い胸元。くっきりとした谷間に流れ落ちたダイヤモンドの高潔な光すら、誘い込むような色気を放つ。
首筋にかかる髪を撫で梳く指の柔らかさ、政宗の身体から立ち昇る大人の女の香りに、小十郎が目を細める。
「cuteだな、小十郎……いいんだぜ?お前の欲しいモノ、好きなだけ」
恥ずかしがらずに、言ってみろよ、Darling?熱い吐息が耳朶を掠めて、ついに小十郎の手が、政宗の細い手首を捉えた。
「先生」
「あ、こじゅ……!」
「この袖のところ、糸が出てますよ。縫ってあげますからちょっとじっとしててくださいね」
「Shiii------iiiiit!!!もう、なんで、なんでいっつもお前はそうなんだよ!!!」
ハイできた、とあっさり政宗の腕を解放して帰り支度を始める小十郎(マイソーイングセット携帯用もちゃんと仕舞っている)に、政宗はもんどりうって喚いた。
実際、こうして迫ってはスルーされることなんて、これで一体何度目か。
でも今回ばかりはイケると思ったのに!夕暮れの教室で女教師に迫られて、どうして喰わない男がいるのだ。もうつれないとかいうレベルじゃない。おかしい。こいつはおかしい!!
「この、おれの!sexyかつbeautifulなperfect bodyを前にして!!糸が出てる!?糸が出てますよだ!!?」
きぃー!!と髪を掻き毟る政宗にも、小十郎は動じない。いつものマイペースなポーカーフェイスで、
「はいはい、いいから先生も帰る支度してください。送りますよ」
「やだ!もう小十郎なんか嫌い!!」
鞄片手に促してくるから、政宗はぷんとむくれてそっぽを向いた。机の上で体育座りでいじけてやる。こんな奴、ちょっとくらい困ればいいんだ!
「先生」
「やだって言ってんだろ!勝手に帰れよ、バカ!」
とうとうグスっと鼻を鳴らしだした政宗に、小十郎は少し首を傾げて。
「でも、暗くなったら危ない。先生綺麗だから」
「……………………えっ!?」
振り返ると小十郎は既にドアの前でこちらを見つめていて、政宗も慌てて足元の鞄を手に追いかけた。
「こ、小十郎っ!さっきのもう一回言って」
「暗くなったら危ないですよ」
「ちっがーう!もう!小十郎、なぁってば!」
すっかり涙の乾いた政宗が嬉しげに小十郎の腕をとる。小十郎はしらっとした顔で前を見ながらもされるがままで。
ド派手な美女と頬傷のヤンキーが連れ立った様は、周囲にはお水の同伴と勘違いされていたりするのだけれど。今日も二人は仲睦まじく、てくてくと帰路を歩いていった。
○小十郎くんと楽しい家族。
小十郎の朝は早い。
最近引っ越してきた5LDKのだだっ広いマンション、中でも一番日当たりのいいリビング前のベランダに置いた野菜のプランターに水遣り。プチトマトや胡瓜を収穫したら、今度は朝食と弁当の準備だ。
味噌汁に卵焼き、焼き魚とメニューが揃い始めると、
「ねぇ〜〜〜小十郎!!あたしのブラウスどこ!?」
キッチンの引き戸をドバーン!と開いて駆け込んでくるのは、異父姉の喜多。職業はエステティシャン&サロン経営者で、小十郎より○○歳年上とは思えない若々しく美しい人である。
問題は、朝っぱらから弟の前で、堂々とベビードール姿を晒しているということで。
「……姉貴、いい加減下着でうろつくのやめろって言ってるだろ」
「なぁによー別にいいじゃない毎日毎日うるさいわねー。美女の肢体が見放題なんて贅沢この上ないわよ!拝みなさい!」
小十郎としては、姉の裸なんてむしろ見たくない。ポーズをつけるな。
「…って違うわよ!ブラウスないのー今日はピンクの着るって決めてるのにー!」
「それなら昨日アイロンかけて姉貴の衣裳部屋に吊っといた。ブラウスコーナーちゃんと見たのか?」
「あら?ほんと!もうっさすが小十郎、あたしの可愛い弟〜!」
そつのない小十郎に喜多は機嫌を上向かせ、傷の残る頬にむちゅううううと熱烈なキスをぶちかますと、ルンタルンタ弾む足取りで去っていく。
これでイラっとしていては、この家では生きていけない。小十郎は淡々と朝食の準備を済ませ、三人分の弁当を用意して学校へ向かった。
この日もピンク色のオーラを背負って迫ってくる担任の先生を受け流し、帰ってくるとマンションの前に見るからに高そうな赤い車が止まっていた。
「お?こじゅたんじゃーん、お帰り〜。」
リビングのソファでひらひらと手を振ったのは、小十郎の異父姉の異母弟(つまりそれとなく他人)の鬼庭綱元。職業はホスト。
ついでに彼の膝の上には、半脱ぎ状態の知らない女。
「たんとかつけんなきめぇ。」
明らかに気まずい状況だが、小十郎は動じず彼にとって最も気に障った部分へ冷たくツッコんだ。
昔から血の繋がった兄弟のように育った小十郎にとって、綱元の女遊びの激しさは辟易するほど、こういうことは珍しくなかったのである。
「オニーチャンに向かってきめぇとか言うなよ〜」
「えー弟くん?似てなぁい、でもこっちの子もかわいいかも。一緒に遊ぶ?」
しかも、これだ。女のニオイのする綱元に関わるとろくなことがない。面倒は御免だ。
綱元も一緒なら全室防音じゃなきゃ嫌だと我侭を言って正解だった。部屋に戻って制服を着替えていると、軽いノックの後、綱元がひょいと顔を出す。
「小十郎クン、にーちゃん仕事行ってくる。あいつは先に行かせたから、玄関までお見送りしてよ」
悪びれない綱元は、玄関先でネクタイを整えてやる小十郎ににっこりと笑って、
「今日の弁当もうまかった、さすがは俺の可愛い弟。がんばって仕事してくるな。」
傷のない側の頬にちゅっと軽いキスをして、颯爽とした足取りで出かけていった。
ここでも、イラっとしてはいけない。この家ではあっという間に胃潰瘍だ。小十郎はやっぱり淡々と食器の後片付けを済ませ、夕食の準備に取り掛かった。
家族の話を聞かせてよ、なんて言い出しておいて、佐助は何とも悲しげな顔で小十郎の肩を叩いた。
「……そりゃ、何事にも動じなくなっちゃうよ。苦労してんだね、片倉の旦那。」
ついでに、何故あれほど伊達先生の誘惑に揺らがないのかもわかってしまって。
伊達センセ、敵のハードルは高いみたいよー。
今度それとなくアドバイスしてあげようかなぁなんて、悲しくなった佐助であった。
○政宗センセイと○○さんの話。
女の子が全身ツヤツヤに磨き上げるのは、大好きな人に振り向いてほしいから。少しでも綺麗になって、もっともっと可愛くなって、彼の視線を奪いたい。
「……なのにさぁー、あいつ全然落ちてくんねぇの。おれがこんなにがんばってるのに、どうしてわかってくれないんだろ?」
リンパドレナージュの後、海藻パックを塗られながら、政宗はぷくーと頬を膨らませてぼやいた。
「今までこんなことなかったのに、本命には気にしてもらえないなんて。おれって魅力ないのかなぁ」
「あら、そんなことないわよ。政宗ちゃんいつもすっごく努力してるし、綺麗で一途で可愛いわ。」
定期的に通っているこのエステサロンは、清潔で広々とした環境も魅力だけれど、何よりこうして密やかな恋心を漏らすと元気づけてくれる、この施術担当のお姉さんが気に入っている。
「ご飯だって、外食しないで体にいいもの自分で作ってるでしょう。私なんて弟に任せっきりよ〜」
「弟さん、高校生って言ってたっけ?家族思いなんだな」
そうよー可愛いの!臆面もなく自慢するお姉さんはとても綺麗な笑顔だ。詳しいことは知らないが、きっと彼女の弟もこんな風に彼女に笑うのだろう。
「……いいなぁ。おれ、あいつが笑ったとこ、あんまり見たことないんだ。」
しょんぼりと言った政宗に、お姉さんはタイマー代わりの音楽を緩くかけると、傍に腰掛けて優しく頭を撫でてくれた。
「政宗ちゃんに、あまり笑ってくれないの?」
「んー……おれにだけってわけじゃないかな。感情が表に出ないタイプっていうか」
いつも荷物運びなどの手伝いは何も言わなくてもやってくれるし、嫌われてはいないと思う。でも、あれだけ迫って微動だにしない奴なんて他に知らないから、本当は嫌われてるのかもしれないと不安にもなる。
「まだ、知り合ったばかりだし。よくわかんないんだ、あいつのこと」
女としても、担任としても、ちょっと情けない発言だったかな。政宗はぺっしょりと凹んだが、お姉さんはにっこりと笑ってパンと手を叩いた。
「だーいじょうぶ!これからもっと相手のことを知って、向こうにも政宗ちゃんのいいところをたくさん見てもらえば、きっとうまくいくわ!あたしが保証する!」
手始めにお弁当とか、料理上手アピールなんてどうかしら?ベタすぎ?なんて首を捻って考える彼女の前向きさに、政宗は左目をぱちぱちと瞬かせる。
そう言えば、今まで身体を武器にしてばかりで、政宗の内面をもっと見てもらおうとはしていなかった。
目から鱗と言わんばかりの政宗を見て、お姉さんはちちちと指を振って眉を寄せる。
「男って案外中身はシャイよ?本命の女になりたいなら、温かみを感じさせなきゃ。この子の胸に帰りたいってね。」
そう語る彼女の雰囲気は、まるで数多の駆け引きを経験してきた熟女の如く。見た目や普段の言動から、自分と同じか少し上くらいだと思っていたのだけれど。
「……Hey、喜多さんっていくつなんだ?」
「さーてパック終了ね!」
突然キビキビと動き出したお姉さん・喜多に政宗はそれ以上何も言えず、湧き出た疑問を飲み込んだ。
どうやら聞かない方が身のためであると判断して。
実は知り合いだったむねさまと喜多姉ちゃん(でもお互い素性は全く知りません)(おぉこわーーーい!笑)