特に脈絡のない徒然小話。いい兄さんシリーズ詰め。
現パロ、小十郎・政宗・いつきがきょうだい、下二人がどブラコン←


○いい兄さんの日。
「ねー政宗さ、昨日駅前のメガネ屋にいたっしょ?」
登校するなり悪友の一人からかけられた言葉に、政宗はあぁ?と柄の悪い返事を寄越した。
仕方がない、寒いのだ。マフラーを外すのも憚られる寒さが悪いのだ。
「んだよ、何で知ってんだてめー。」
「いやさ〜、俺様向かいのスタバで待ち合わせしてたんだわ。」
「何だデートかよコラ!裏切りもんがよぅ!」
「チカちゃんは夢を追いすぎなんだよ。純愛なんかドラマにしか存在しないぜ?」
冷めた佐助とがなる元親。の隣でもふもふパンを頬張っている幸村。悪友勢揃いだ。
「つーか、わざわざ見てんなよ」
食べかすを落とすなと幸村を小突きつつ言う政宗に、佐助がにたぁと笑った。
「しょうがないじゃーん。だって、小十郎さんにあれこれメガネかけさせてはうきうきしてる政宗がおもしろかったんだもん」
「・・・・・・!!!」
そう、確かに、昨日は兄である小十郎がメガネを買うというので、くっついて行ってあれこれ選んでいた。弟の政宗が言うのもなんだが、小十郎は男前なので、何をかけても似合うから、とても楽しかった。そりゃもう、本人そっちのけで盛り上がるくらいには。
「し、仕方なくだよ!自分の兄貴がだっさいメガネしてたら嫌じゃねーかよ!」
「またまたー隠さなくていいって。俺様だって小十郎さんの流し目にはくらっときちゃうもんね」
いい男なんだよな〜としたり顔の佐助に、新たにおにぎり包みを出しつつ、幸村が力強くうなずいた。
「小十郎殿は、本当にいい兄上でござる。某小十郎殿に頭を撫でていただいたとき、図らずも政宗殿を羨ましく思ったぞ!」
「なっ・・・!?い、いつだよそれ。俺以外のやつの頭撫でるなんて小十郎許せねぇ」
「ずるいでござる。某も小十郎殿のような兄上がほしいぞ!佐助ぇ!」
「お兄ちゃんは今からじゃ生まれないねぇ。つか俺様あんたのオカンじゃないから。産めないし。」

「・・・・・・いいよなー、政宗んちはいい兄ちゃんでよぅ」

どよんと影を背負った元親の言葉に、ぎゃわぎゃわ騒いでいた三人が静まる。
「・・・だよね、チカちゃんちはね・・・・・・」
「元就さんちょーこえーもんな・・・」
「某初めてお会いしたあの日の恐怖が忘れられないでござるよ・・・」
その日を思い出して、全員がぶるりと震えた。
小学校入学直前に、地域の子ども交流会で仲良くなった四人が公園で遊んでいたとき。学校帰りの兄・元就とたまたま会ったのである。
「レンジャーごっこに付き合ってくれるっていうから、優しいお兄ちゃんかと思いきや」
「redは元親がやれ、とか言うから、贔屓かっこ悪い!とか思いきや」
「元親殿以外全員悪の総帥の手下って、発想が斬新すぎて恐怖しかなかったでござる」
悪の総帥役はもちろん元就だった。ものすごく冷徹で怖かった。しかも演技かと思ったら地だった。
基本的に弟を自分のおもちゃとしか思っていない、典型的なジャイアニズム俺様兄貴なのである。

「見た目は小十郎さんのが強面なのにねぇ」
「小十郎さんならパシられてもいい。元就やるから小十郎さんくれ」
「悪ぃけど死んでも嫌だ」


○いい兄さんの家族。
休日の朝は大体騒がしい。
休みなんだからのんびり寝かせろと主張しても、下二人がその日その日で代わる代わるに、何やかやと起こしにやってくる。
平日は起こしたって起きないくせに、休日になると張り切りやがって。子どもというのはそんなものだけれども。
「なぁ、小十郎!起きろよ、起きろって!大変なんだよ!」
今日張り付いているのは弟の政宗だ。しかも何やら涙声である。
「……何だ、何泣いてんだ。高校生にもなって妹にイジメられたのか」
「違う!俺そんな弱くねーもん!だっていつきが」
「いつきが?」

「いつきが、男とデートに行くっていうんだよ!!」
前から思ってはいたが、この弟はちょっとシスコンすぎやしないかと心配になった。

「いいじゃねーかデートくらい。可愛い妹がモテるのを喜んでやれよ」
「だって、だってこじゅろぉ」
背中にひしと張り付いてにゃむにゃむ言っている弟を引きずってリビングへ行くと、なるほどデートらしくおしゃれした妹がかぁっと頬を赤くして怒っていた。
「政にい!こじゅ兄ちゃんに告げ口したべ!サイッテー!」
ぷりぷり怒る姿もなかなか可愛らしい。よしよしと頭を撫でて落ち着かせる。
「まぁ、政宗も心配なんだよ。デートすんなとか野暮は言わねぇから、夕食までには帰ってこいよ。」
「…!こじゅ兄ちゃん、ありがとー!」
「小十郎は甘いんだよ!いつきなんかまだ中一のくせに、化粧なんかしてるぞ!」
「や、やだ政にい言わないで!こじゅ兄ちゃんに嫌われちゃう!」
うぇえんと半べそで取っ組み合いになる下二人を、むぎゅっと抱き寄せて宥めた。昔からやんちゃな二人を黙らせるには、こうしてやるのが一番。
「こじゅうろー」
「こじゅ兄ちゃん」
二人とも大きくなったが、こんなところは変わらず可愛いものだ。
「いつきは、化粧は色つきリップクリームまで、夕食までに絶対帰ってくること。政宗は今日の夕食担当だろ、いつきが早く帰ってきたくなるメニューを考えること。明日は三人でどこか遊びに行こうか。それでいいな?」
兄の出した提案に、下二人はぱぁあっと目を輝かせてうなずいた。
お兄ちゃん大好き!と二人から熱烈ハグを受けながら、『いいお兄ちゃん』で評判の長男は、さて朝食は何にしようと首を捻るのだった。

後日、二人きりに味をしめた政宗がしきりに「デート行けよ」と促すのに、いつきが「同級生の子よりこじゅ兄ちゃんの方がかっこいいもん」とか言ってケンカになる(笑)


○いい兄さんと買い物。
「小十郎!あそこ、俺あそこの店見たい!」
繋いだ手をゆさゆさ揺らして主張すると、兄・小十郎がはいはいと苦笑してうなずいた。

今日は、来るクリスマスのプレゼントを選びに、賑やかなショッピングモールへとやって来た。
いつもは兄弟3人揃って買いに来るのが通例なのだけれど、政宗が友人の試合の助っ人で出かけていた先週の土曜日、妹のいつきが抜け駆けで小十郎と買い物デートをしていたので、今日は政宗がデートできる番。
ずるいずるいと騒ぐいつきに、絶対ついてくるな!と牙をむいた政宗を、いつもだったら怒る小十郎が、「きょうだい仲良く、平等に分けっこだぞ」と諭すだけで了承してくれたから、政宗はご機嫌だ。
最初に小十郎の新しいメガネを受け取って、次に入ったのは、メンズアクセサリーのショップ。ドラゴンがモチーフの、政宗お気に入りのブランドだ。
「いらっしゃい政宗!おっ、随分男前なにーさんが一緒だね。」
「おぅ、慶次。お前まだバイト続いてんのか、珍しい」
背も高くてゴツいのに、なぜかポニーテールがよく似合う、馴染みの店員にひらりと手を振る。
10代の客が多いフロアでもあり、居心地の悪そうな小十郎をぐいぐい引っ張って店内を歩いていると、慶次がちょいちょいと手招きするのが見えた。
「これこれ、新入荷のペンダントトップなんだけどさー。政宗の好みぴったりだと思って」
指差されたのは、シルバープレートに黒いドラゴンの影がデザインされたもの。左向きの竜の目が青い石、右向きの竜の目が黒い石で対になっている。
「そちらのにーさんと、おそろいで持っちゃうなんてどう?」
「!!」
ひそひそっと告げられた提案に、政宗の目が輝いた。
「こじゅうろー!俺決めた、これにする!」
「うん?…………政宗、お前こんなちっこい板で5000円以上するやついつも買ってんのか」
「う…でも、でもCOOLだろ?絶対これ、俺と小十郎お揃いでつけるんだ!」
お年玉いらないから!弁当当番だって毎日やるから!と必死で言い募る政宗に、小十郎は困った顔で首を振る。
「まぁ、お前だけならまだしも、俺はペンダントなんかいらねぇぞ。会社に行くのにんなもんつけらんねぇ」
はぅっとショックを受けて、じわわーっと涙目になり俯く政宗の頬が膨れていく。幼少期を思い出させる可愛い仕種だが、小十郎も譲れない。我侭に付き合って出せる額では到底ないのだ。
「ほら、政宗。一つだけなら買ってやるから。どっちがいいんだ?」
「…………………やだ!」
あぁ、こんな場面、10年くらい前によく見たな。ポテチはのりしおかコンソメかとか、旅行は遊園地か動物園かとか、ことあるごとにこうして膨れて拗ねるのが政宗だった。
困りきって懐かしい思い出に浸ってしまった小十郎の腕を、慶次がちょいちょいと突いた。
「にーさんにーさん、任せてよ。これ、ストラップ仕様にすれば値引きもできるし、にーさんも携帯か財布にでもつけられるよ。ちなみに政宗、会員ポイントが今回分で溜まるから、お買い上げ二割引だよ」
「慶次、ほんとか!?」
がばぁっと顔を上げた政宗に、慶次はマジマジ!とにやにや笑いながらピースを送っている。
「こじゅうろぉ」
うるるん瞳でしおらしくねだられては、さすがに小十郎も折れるしかなくなった。

「小十郎、ケータイ貸せ。これ絶対外しちゃだめだからな!」
「よかったなぁ政宗。お買い上げありがと、こじゅうろうのにーさんv」
先程の政宗の真似なのか、おどけた乙女ポーズで上目遣いをする慶次に、政宗がはわっと慌てて小十郎に抱きついた。
「や、やめろよな!小十郎のこと兄ちゃんって呼んで甘えていいのは、きょうだいの俺といつきだけなんだからな!」
「えっ?」
何やら驚いた様子の慶次に構わず、政宗はぷりぷりと小十郎を引きずってレジを後にする。
「……すまん、変わった子だが、これに懲りず仲良くしてやってくれ」
残されたお兄ちゃんの台詞に、慶次が目を見開いた。
店を出て行く二人は、仲良く手を繋いで、ときどき政宗が肩を小突いたり、腕を掴んだり、すれ違う男女カップルすら霞むあまあまオーラを発している。
「…ふつうにカップルなのかと思いきや、兄弟だったんだ。」
兄弟でペアストラップかぁ。人間のありようは多彩でなんぼの精神の慶次でも、思わず呟いてしまう。
政宗がクラスイメイトにブラコンブラコンとからかわれている意味が、今はっきりとわかった瞬間だった。


○にぃにの日。
長男の小十郎がまだ思春期だった頃。

小さな弟と、更に小さな妹が、鈴のような高い声で騒ぎ怪獣のようなデカい足音を響かせる我が家に、多感な年頃の少年は耐えかねていた。
小十郎は自他共に認める冷静な思考の持ち主だったけれど、特にこのとき受験という、人生に漠然と思い悩む少年たちに立ちはだかる、非常に現実的な壁を提示されていた頃で。
大きなお兄ちゃんとして様々なことを耐えてきた彼は、一際大きな金切り声にシャーペンの芯が折れたのをきっかけにして、初めて決意した。
今日こそ言ってやる。チビ共うるせぇ、親は何やってんだクソヤローってな!!
憤懣顕に騒音の元のリビングをぶち開けたら、

「ぅあぁあああん、こじゅろにいちゃのおやつがぁあああ」
「ぅ、ふぇ・・・」
床にひっくり返ったプリンを前に、鼻水まで流して大泣きする弟と、それにもらい泣きしかけている妹が座り込んでいた。
「お、おい何やってんだ・・・」
思わずたじろぐ勢いで泣く弟に歩み寄ると、いつもならぱっと抱きついてくるその小さな体が、びくんと震えて縮こまってしまう。
「政宗・・・どうした?」
もう些細な怒りにこだわっている場合じゃなかった。膝をついて肩に触れると、えっくえっくと嗚咽まじりに、
「にいちゃ・・・おべんきょうだか、まさむねの、おやつわけてあげって、おもったのに」
あとはもう言葉が続かなかったけれど、この状況を見れば一目瞭然だ。
ごめんなさいと何度も繰り返して泣く弟の、幼い優しさに触れて。
こんなにくしゃくしゃに泣いているのにおかしいだろうか、小十郎の心はすうっと凪いで、いとおしさでいっぱいになる。
「政宗・・・ありがとうな。プリンはまだ冷蔵庫にあるから、出して半分こしよう」
穏やかに何度も髪を撫でたら、ようやく声を上げて胸に飛び込んできた弟をぎゅっと抱きしめた。

その後、穏やかな空気に安心した妹が、幼子の常でふと目に入った床の上のプリンを口に入れようとするのに慌てたり、結局またわたわた騒がしく過ごしてしまったのだけれど。
「・・・にぃに、いっしょにねよ」
妹が生まれてからは久しくなかったおねだりと呼び名に、まったくこいつには勝てないのだと、穏やかな笑みを浮かべた小十郎であった。


そしてブラコン増産ないい兄さんとなる(笑)