特に脈絡のない徒然小話。
パラレルなどし放題なので、題・注意文にご用心!
○愛しさの周波数
冷え切った小さな手をおし包んで、そのときふっと、たまらなく、この小さな存在が愛おしく思った。
目一杯開いても、力の限り握っても、自分の二回りは小さい手だ。
たこもない、皮も厚く硬くなっていない、まだふくふくとやわい手だ。
知っていたはずだったのに、今突然目が覚めたみたいに気付く。
この手を包み、守ること。
その圧倒的な重みとあたたかさに胸がつき動かされて、はぁと息がもれた。
人を想うということは、これほどに重く苦しく、清々しいものだったろうか。
「こじゅうろう、あったかい」
もれた息はたまたまかじかんだ手を温めたようで、くりりと澄んだ目が嬉しげに細められる。
小十郎があったかいんじゃありません、あなたが冷たいんです。
捻くれたいつもの言葉が、のどに引っかかる。
あぁ、なぜだろうか。
きっと今までこの両の目は数多のものを映してきたはずなのに、本当はずっと眠っていたのだ、そして先ほどこの手に触れて、あまりに冷たいから、あまりに小さいから、それでようやく飛び起きたのだ。
そんな馬鹿な考えがあたかも真実のように思えて、ふと。
世界のすべてが愛しむように、あなたを愛おしく思います。
そう伝えたくなって、でもその言葉も口にはできなかった。
不器用で捻くれた自分が少し悲しい。まっすぐにあなたを慈しむことができたらよかったのに。せめて一言、あなたが大切だと、言えるだけの自信があれば。
それでも、あなたの隣にいられるのは、
「こじゅうろう、さむいな。さむいけど、さむいのも、いいな」
ぎゅっと懐に入り込んで丸まった小さなあなたの、赤くなったまろい頬の上で、きらきらと光を放つように弾む瞳が伝えてくれるから。
「ひとりじゃないから、いっしょだから、さむくてもいいな。」
口にはできなくても、愛おしいと思うこの気持ちは、確かに伝わっていると。
ヒネて荒れてた小十郎が、梵さまを愛しむことで、少しずつひとのそばにいられるようになる、とか考え出すとものすごくたまらん。だってぬばたまの闇に光一つだもん!
○君の音を聞く。
例えるなら川のような。
静謐で涼やかで、そのくせ激しさも秘めた。
そんな音が聴こえたから、すぐにわかった。
あぁ、この音はお前だ。そこにいるのか。
「・・・どこかで会ったことがあるか?」
明らかに年下の青年に、まるで上司か何かのように親しげに尊大に声をかけられて、頬傷の男は戸惑いを顕にしている。
「なんだ、覚えてねぇのかよ。冷てぇな・・・とは言いたくないが、姿形がまんまだとさすがに言いたくもなるぜ」
普段なら常識に合わせてふるまいもするが、ことこの相手にそれは必要と思えなかった。
たとえ覚えていなくても、青年にとっては、目の前の男は自分の腹心。右目とまで呼んだ、半身だった。
いよいよもって不思議そうに眉を寄せる男のありようは、正しいものだろう。ずっとずっと昔生きた記憶そのままに生まれた自分がイレギュラーであることは、自明の理。
だから、責めるつもりもなかった。
「まぁいい。Hey、小十郎!お前今回も小十郎か?」
案外捌けた表情で、彼はくいと右目の眼帯を上げて見せた。
「こっちは今回もそのまま、独眼竜の政宗だ。右目がすかすかして落ち着かねぇし、お前戻ってこいよ。」
覚えていなくても、魂が呼び合う。音が聴こえて引き寄せる。
ならば、また出会いから。何度でも。
○クリスマスの再会?
現パロで、オカン同盟が双子。あとあんまりかっこよくない小十郎です。当社比。
ちょっとホームセンター行ってくる、と声をかけたら、似てない双子の小十郎が俺も行く、と言うので一緒に出てきた。
イブもクリスマスも予定なく家でダラダラ過ごしているなんて、モテる割に甲斐性のない男!と言ってやったら、そう言うお前も家にいるじゃねーかってさ。悪かったね!
「しっかし、何が悲しくてクリスマスにヤローと、しかも弟と一緒に買い物?」
「お互い様だ。あと弟はお前だって何回も言わせんな」
「俺様が兄なの!佐助くんが先に出てきてって母子手帳に書いてあったでしょ!」
「双子は兄貴が奥にいるから後に生まれた俺が兄だ」
ぎゃんぎゃん言い合ってるこの内容も、自我が芽生えた頃からずっとお決まりのやりとりだ。いわゆる挨拶みたいなもん。
男兄弟で言うのもなんだけど、仲は結構いい方だと思う。よく一緒に出かけたり、DVD借りっこしたりするしね。
けど、ホームセンターにはできるだけ一緒に来たくなかった。
何でかって言うと、
「おい、本棚になりそうなラックは………梵天丸様ぁあああ!!!」
あーあ、やっぱりね。
小十郎はスプリンター並のトップスピードで走って行った。
追いかけていくと、猫のトイレ用砂の袋を抱きしめておいおい泣いている。
「梵天丸様…!おいたわしやこのような平たく冷たいお姿になられて…!それでも小十郎は、小十郎は翻意など致しませぬぞ…!!」
小十郎は昔から、可愛いものや小さい生き物に「梵天丸様」と名付けるという奇癖持ちだった。
最近はそれが子猫という具体的な形に定まったらしく、とにかく子猫を見れば駆け寄り愛でて、何か武士みたいな言葉で語りかけるのだ。
ホームセンターやペットショップなんかは、それこそ猫関連の何かに遭遇する確率が高いので、できるだけ一緒したくないってわけ。
肝心の「梵天丸様」が何なのか、それはまだわからないらしいんだけど。
ちなみに、小十郎が彼女を作らないのも、「梵天丸様」のため。小十郎は将来「梵天丸様」と結婚すると昔から決めている(猫でしょ?猫じゃないとして「丸」って男の子の名前だよね?というツッコミは怖くてできない)
ともかくも、普段冷たすぎるくらい冷静な小十郎がこれだけ周囲が見えなくなるのだから、何かどこかに刻まれた、大切なものなんだろうと思って、俺様は見守っている。
「はいはい、それ商品だから、棚に戻してねー。安心しなよこれプリントだから、この辺猫だらけでしょほら見てよ」
「なっ……お、俺はまた梵天丸様を見誤ったのか……」
「うん大丈夫切腹しないでね。今21世紀だからね。」
肩を落として落ち込む小十郎が本当に辛そうだから、茶化しつつも放っておけなくて、ぽんぽんと背中を叩いて場所移動を促した。
「……佐助。俺は本当に、梵天丸様に会えるんだろうか…」
歩きながら、小十郎が低く呟く。
俺様は何も言えない。未来は誰にもわからない。あるときひょんなことから、「梵天丸様」から声をかけてきたりするかもしれないし。
「Heyそこのヤロー連れ!侘しいクリスマスに肉食わねーか?」
ちょうどクリスマスボックス一個余ってんだ買ってけよ、と上から営業をかけてきたのは、通りかかった有名チキン店のバイトくんだった。
侘しいのはお互い様でしょ!と返さなかったのは、
「ぼ………ぼん、てんまる、様?」
とか何とか寝ぼけたうわ言を吐いた片割れに、
「ん……Oh、小十郎じゃねぇか!俺はもう梵天じゃねーぞ、政宗だ。you see?」
とか何とかゆるーく自然にバイト君が返したからだった。
……ねぇ、これもクリスマスの奇跡かな?
なんていうか、あんまりにもしょっぱい展開で、そんなきらきらしい言葉で呼ぶの、ちょっと憚られるんだけどさ。
(って猫関係ねーーーじゃん!!!って誰か俺様と一緒に叫ぼうよ!!)
梵天丸様への愛情だけ明確に記憶して転生した小十郎っていうネタ(笑)
佐助は記憶なし、政宗様は記憶ありつつ上手に適応してる感じで。たまには小十郎が必死なパターンもよいではないか!
○わがまま梵ちゃんで小話。
「こじゅろー、あいしゅv」
小さな主がきゃるんと愛らしい上目遣い笑顔でそう言った。
「梵天丸様…その手のスプーンを御覧なさい。今ついさっきこの瞬間に今日のおやつを食べ終わったところでしょうが」
「ちがう!ぼんがたべたの、パンナコッタ!あいしゅくれ!」
「くれじゃありません、くださいとお言いなさい」
「あいしゅ、くだしゃい!」
「ダメです」
「Boooooooooo!!!」
スプーンを握り締めたままがつんごつん机を殴って、ぎゃおぎゃおと叫ぶ怪獣。子どもだから仕方ないとはいえ、言語というものが通じないその暴れっぷりに小十郎はげっそりとため息をついた。
大体なぜ、この若い身空で(まだ十代の学生だ。老けてるとか言った奴前出ろ前だ)こんなちびこいガキんこの面倒なんぞ見なきゃならんのか。この子どもの親に恩があるのは、俺ではなく俺の姉なのに。
…と、本人の前で言えなかったからここにいるんだけれども。
「くだしゃいってゆったらくれるってゆったでしょうがー!」
「誰がそんなこと言ったんですか。食べすぎはデブの元です。我侭言うと喜多に言いつけますよ」
「…!ふぎゃああああんじどうぎゃくたいだー!!」
おい姉貴、あんた普段どういう子守の仕方してんだ。いろんな意味で不安すぎる。
「大体、最初に梵天丸様がパンナコッタがく…食べたいって我侭を言ったんですよ。アイスでいいなら家にあったのに、小十郎はわざわざスーパーまで買いに行ったんですからね」
「だって、ぼん、あいしゅたべたいの!くだしゃいの!」
「…なんですか、ちょっと可愛く言ったからって小十郎は折れませんよ。ハイ片付けしましょう」
「う〜〜〜〜!」
顔を真っ赤にしてプルプル震えて唸るのを無視して、ぱっぱと皿とスプーンを取り上げてしまう。このまま付き合っていたら、強面に似合わず豊富な父性愛がくすぐられてしまいそうだ。くだしゃいの、はヤバかった(日本語的にわけわからんが)
まったく、クソ我侭なくせに、子どもってのは可愛くて憎めねぇからいけねぇ。
はーやれやれと洗い物を始めようとすると、ふくらはぎに蹴りを入れられた。
「こじゅろーばか!じっかかえる!」
「はぁ?」
べーっと決めポーズの後はデデデっと走り去り、小さな怪獣はどうやら自分の部屋に引き篭もったようだ。
「…………」
実家帰るって、ここお前んちだし。ていうかどこでそんな台詞覚えてきたし。
これは本格的に、姉の育児方針を改める必要があるのではなかろうか。なんともいえない気分で、とりあえず洗い物を再開した。