特に脈絡のない徒然小話。
パラレルなどし放題なので、題・注意文にご用心!
○貧乏ふうふが行く!
*大工の小十郎とスーパーでバイトする政宗様。のっとにょた。
茶色い壁が昔ながらの、ある小さなアパート。
外付けの階段は踏む度ミシミシ不安な音をたて、どこからか入る隙間風や雨漏りは日常、台風の日には建物ごと吹っ飛びそうに揺れる。
家賃は二万(水道・共益費込み)、6畳の1DK。
その名も婆裟羅荘。ここが二人の愛の巣である。
「おかえり、小十郎!」
玄関を開けるなり、出迎えてくれる政宗の笑顔に小十郎は微笑んだ。木屑がつくからと何度たしなめても、この匂いがいいんだとぎゅっと抱きつくのをやめないのに、困りつつも癒される。
「政宗様も、おかえりなさい。今日はどうでした?」
「それがさ、今日は店長に余り物のコロッケ貰ったんだ!」
小さなちゃぶ台の上には、もやし炒めや野菜の葉っぱ味噌汁、こんにゃく入りご飯といったお馴染みかさ増しメニューの他に、神々しい黄金の俵型が。
「いつもなかなかいいもん作ってやれなくてごめんな。」
「政宗様・・・」
謝りたいのは小十郎の方だった。なかば駆け落ちのごとく家を飛び出してきた政宗は、したこともない接客業を必死にこなしながら小十郎を支えてくれている。
家計簿とにらめっこも、理不尽なクレームに頭を下げるのも、本当ならするはずのなかった苦労なのに。
「小十郎は、幸せですよ。政宗様と一緒に暮らせて、あなたがこうして笑ってくださる。それが何より嬉しいんです」
あなたはどうですか、辛くありませんか?優しい小十郎の瞳に、政宗も頬を染めて微笑んだ。
政宗様は贅沢すべて捨てても小十郎のあたたかさを選んでくれると思う!
○続・貧乏ふうふが行く!!
「え、夜の仕事?右目の旦那が?」
パート先のスーパーの休憩室で、残り物のお惣菜を弁当代わりに食べていた政宗は神妙にうなずいた。
愚痴相手は主夫仲間の猿飛佐助。ちなみに彼はお隣の酒屋でパート勤めだが、店主同士が仲良しのためか、いつも堂々とここで休憩をとっている。更にちなみにアパートでもお隣さんのため、小十郎共々、いわゆる家族ぐるみの仲ってやつだ。
そんな佐助は普段の軽薄な態度を一変、ひどく深刻な顔で眉根を寄せる。
「そっか、とうとう……本職に返り咲き」
「あぁ、本職に……って違う!!アンタいい加減うちの小十郎をヤのつく会社員扱いすんのやめろ!!」
「え、違うの?あっそうか、ホのつくサービス業の方?」
「違ぇえええ!!!」
その話が出たのは、記憶も新しい昨夜のことだ。
日中の大工の仕事に加えて、一ヶ月間、夜間の警備員の仕事をしようと思うと言った小十郎は、既にやる気で頭を固めていた。
高校時代の友人・前田利家の同僚が怪我をして(最近強盗と警備員が大立ち回りを演じたというとある銀行、あれって確か彼の担当だった気がする)急遽の話だが、その分お給金や夕食込など破格の待遇だったようで。
『大丈夫です、これでも腕は立ちますし、食費が浮いて給料も増えれば、政宗様にもっと好きなものを食べていただけますから。』
押し黙って下を向いた政宗に小十郎はにこにこ笑ってそう言ったけど。
「そりゃーよ、剣道柔道空手道、何をとっても師範クラスの腕前でケンカは負けナシ、昔特攻かけてピストル素手でぶっ壊したくらいの奴だから、身の安全についてはそんなに心配ねぇんだろうよ」
「あれ、なんか俺様、空耳?今のどう考えてもヤのつく世界の住人の話だよね?」
「けどそれだけじゃねーだろ?飯が出るって、仕出し弁当だかなんだか、そんなんばっか毎日食って仮眠室でうたた寝しただけなんて、絶対体によくないし。現にあいつ、昼に弁当と着替え届けに行ったらさ、疲れきった顔して、政宗様のごはんは本当においしいって笑うんだぜ?」
「まぁある意味毎日こんにゃくご飯より精はつくかもしんないけど。ていうかさっきの話スルー?」
「頬がちょっとこけて隈できて、それでも俺に心配させまいとさ……小十郎だけにそんな無理させてひとりで贅沢なモン食ったって、幸せになんかなれねーのに。あいつ全然わかってねぇよ」
煎餅をぼりぼり齧りながら茶々入れをしていた佐助も、さすがに手を止めて居住まいを正した。
政宗は本気で凹んでいる。それはそうだ。二人で暮らし始めてから、何が一番嬉しいかって、慎ましくともあたたかく、愛するひとと談笑しながら過ごす食卓なのだ。
豪華な料理も贅沢な家具も、空っぽの入れ物じゃ意味がない。それを政宗はよく知っている。
「俺はただ、がんばって働いたら、あったかい風呂にじっくり浸かって、笑って飯食って、ぐっすり眠って。そんな当たり前の生活を、小十郎としたいだけなのに」
小十郎を待ちながら夕食を作って、家計簿とにらめっこして、天気のいい日は一組の布団を干す。それがどれだけ幸せなことか。寂しくて淋しくて、涙が浮いてくる。
馬鹿、小十郎の馬鹿!早く帰ってきてくれなきゃ、一月なんて、耐えられるわけないのに!
うっうっと泣き続ける政宗に、困りきった佐助が携帯を取り出し、徒歩十分の現場にいる小十郎へSOSを出すまで、あと30秒。
佐助が撤退する間もなく、駆けつけてきた旦那の胸に飛び込んだ政宗が二人の世界を構築するまで、あと……
○バサラ幼稚園の二学期。
「皆の者!夏休みの宿題はやってきておるか!?」
体も声も懐も大きい武田先生に言われて、久々に友だちに会えた嬉しさできゃいきゃいと騒いでいたちびっこたちは、元気にはーいと手を挙げた。一部「むろんにございますおやかたさばーーー!!」と叫んでいたが、大勢に影響はない。
「それでは、そなたたち。こうさくをつくえのうえに。えにっきはじゅんばんにわたくしのもとへ」
優しくて穏やかで綺麗な上杉先生にも、ちびっこたちはお行儀よくはーいと手を挙げて従う。一部「いままいりますけんしんさまぁあああん」と幼児にあるまじき喘ぎ声を上げていたが、皆見事にスルーした。
「へい、ぐんしん!おれとこじゅうろうのえにっきだぜ!」
「よろしくおねがいします」
とことこと手を繋いでやってきた政宗(偉そうな方)と小十郎(礼儀正しい方)に、上杉先生は微笑んで白く繊細な手を伸ばす。
「やすみちゅうもなかよくやっていたようですね、おさなきりゅうたちよ」
顔を見合わせて笑う二人の様子に和やかな笑みを浮かべていた上杉先生だったが、政宗の絵日記を見ておや?と少し目を瞠った。
「たけだけしきりゅうよ。そなたのえにっきは……」
毎日持ち帰った朝顔のお世話をして、その様子を絵日記に書くのが宿題だったのだが。
「やー!おれがあさがおのせわなんて、がらじゃねぇ。かわりにまいにちこじゅうろうがたのしくせわしてやってたから、おれはあさがおのせわするこじゅうろうをえにっきにしたんだ!いいあいであだろ?」
「ま、まさむねさま!それはいけません、かきなおしてくださいとやくそくしたでしょう!」
「おれはいえすなんて、ひとこともいってない。いいだろ、みぎめのかんさつなんて、おれにしかできないんだぜ?」
あわあわと慌てる小十郎にも、政宗は胸を張って堂々としている。皆と同じことなんてつまらないし、好きでもないものを毎日日記に書くなんて、全然やる気が出ない。
政宗にとっては、朝顔の様子に日々一喜一憂する小十郎の一生懸命さの方が、ずっと大事な気がしたのである。
「……なるほど、りゅうのみぎめはずいぶんけんめいにあさがおをそだてていたのですね。みぎめのどりょくをたたえるきもち、このえから、よくつたわってきますよ。」
誉められてきょとりとする小十郎の手をぎゅっと握って、得意げに笑った政宗だったが、
「しかし、ふとくいなことをひとまかせにしてはいけませんね。みているだけでなく、ともにどりょくしてこそのそうりゅうではありませんか?」
上杉先生の指摘が随分ショックだったようで、しばらく教室の隅に座り込み、小十郎に宥められていたのであった。
復活したら「かえってきたぜぇ、おまちかねのりゅうがな!」とか言う(笑)
○前田屋から愛を込めて。
会社では出世頭として忙しいポストを任されている独り身男性。料理はそこそこできるものの、残業の多い身では平日キッチンに立つ気がしない。しかしコンビニ弁当やカップラーメンじゃ、体が資本な社会人としてはいただけない。
だから小十郎は今日も、手作り弁当の店・前田屋にやってきた。
「あ・・・」
「やぁ、こんばんは」
カウンターで顔を上げた青年・アルバイトの伊達政宗くん。毎晩通ううちに顔を覚えてくれたようで、はにかんだ微笑みでいらっしゃいませと言ってくれる。
「片倉さん、今日も残業?ちゃんと体休めなきゃ駄目だよ」
「もう若くないんだからって?」
「ち、違うよ!心配してんだろ!」
見た目は少しヤンキーっぽいが、いい子だ。大学で真面目に学ぶかたわら、生活費と自らの勉強のためにほぼ毎日ここでバイトをしているらしい。
最近の若者はだらけてるだの礼儀がないだの、好き勝手言うオヤジどもに見せてやりてぇな。
いいこいいこと頭を撫でたら、照れ隠しにメニューを押し付けられた。
「今日は何?順番だと、三色そぼろとあっさりおかず弁当だけど。」
前田屋の魅力は、野菜や魚の豊富なメニューと、毎日順に食べても飽きない定番メニューの数に、更に月替わりの弁当まであるという充実ぶりである。
「そうだな・・・せっかく月の始めだし、月替わりを頼む」
いつもは定番メニューを順に頼んでいるのだが、やっぱり新しいものは試してみたい。
そう言うと政宗は猫のような目をにっと弓型に笑ませて、厨房からすでに袋に入れられた弁当を持ってきた。
「そう言うと思って、準備してた。今日はこれが最後だったから」
常連とはいえよく気が利くなぁと驚きつつ、袋を受け取る。じんわりと温かいそれとまたなと無邪気に手を振る政宗に、小十郎はほくりと笑みをこぼした。
帰宅して包みを覗いて驚いた。注文した月替わり弁当の他に、もう一つ。
『おかずの試作品、よかったら感想きかせて。政宗』
そう書いたメモが乗せられたタッパー(きっと政宗の私物なんだろう)中にはきんぴらやほうれん草のごま和えなど、いくつかのおかずが綺麗に並べられている。
それだけなら、仲のいい常連だから協力してほしいということかなと微笑ましく思っただろう。
けれど小十郎は気付いた。メモの端、消した跡がある文字。
『また、あいたい』
いつも気にかけてサービスしてくれるのも、目が合うと少し赤くなってうつむくのも、そのくせチラチラと上目にこちらを見ているのも。
もしかしてもしかしなくとも、勘違いではなかった?
「・・・満更でもないどころか、すげぇ期待してんじゃねぇか」
思わず熱くなる頬を抑えて、年甲斐もなく浮かれている自分の心がおかしくて、少し笑った。
さぁ明日、一体何と声をかけようか?
○略奪愛で小政。
*現パロ、略奪愛で病んでる小政です。キワモノ注意!
「この世界で守るべきものがあるとしたら、政宗。それはたったひとつ、お前だけだ。」
そう言って小十郎は奥さんを捨てた。その人が社長の娘だったから、同時に会社も捨てた。
有能すぎて選びきれないほどのヘッドハンティングの打診から一番条件のいいところを選んで、購入した高層マンションの最上フロアへ一緒に転居して。
それらは全て、出会って一月のうちのこと。
俺は柔らかい女の身体も子を産める子宮も、地位も名誉も財産も、何も持っていないただの大学生だった。何もかもを持っていたはずの小十郎が、俺のために何のてらいもなく手の中の安寧を捨て去ってくれた、その見返りに与えられるものなどありはしない。
ただ、小十郎を愛してる、その気持ちにだけは自信がある。誰よりも彼を好きで、望まずとも奪いとってしまうほど二人は愛し合う運命だったと、世界中の人に躊躇いなく言える。
十も歳が離れていても、男同士でも、それだけは絶対に間違いない。
だから全身全霊をかけて小十郎を愛しみ慈しみ尊び、自分の全てを彼への愛に捧げて。喜んでくれるならどんな面倒も厭わないし、機嫌の悪いときは身体を投げ出して受け止めてきた。
全部、小十郎を愛してるからできること。
それなのに。
「お前が負担に思うことはない。俺がお前の荷物になったら、そのときは迷わず俺を捨てろ。古い荷物は棄てて、お前は新しい扉を開けて進めばいいんだ」
小十郎は微笑んで言う。愛してると囁くときと同じ目で、同じ微笑みで。いつか俺がそれを当たり前だと思うように、本当にそうできるように。
それが、とても悲しい。
大人な小十郎にとってはそれが愛の示し方なのだろうか。そんなもしもを受け入れるくらいなら、殺してでも自分のものにすると言われた方が俺は嬉しい。
なぁ、なんで、どうして、もっともっと束縛してほしいのに。鳥籠に閉じ込めて鍵をかけて、そのくらい激しく想いをぶつけてほしいのに。
まだまだ愛が足らない?不安にさせてる?
本当に、俺を選んで幸せ?
これが奪いとった愛情の代償ならば、耐えてみせるから。
いつか隣でしっかりと手を繋ぐ俺を振り返って、ずっとずっとそばにいるんだって、ずっとずっと二人で生きていきたいんだって、それだけ真実小十郎だけを愛してるんだって。
いつかきっと、いつか必ず、この気持ちに気付いて。
哀しかなしとなく小鳥。某有名曲からの連想でした。