*にょた兵長で、エルリ・エレリ・ミカ♂リ・ペト♂リ・ハンリ
*駆逐後の世界で、にょた兵長を愛でたいだけの話。
*一回ループしてリヴァイ班も生き残った的なパラレルということでごまかし←
大丈夫そうな方だけどうぞ(本当に申し訳ありません)


にょた兵長が愛されている話。



 巨人との戦いの日々が終わった。
 現実は残酷なもので、物語のように平和な世界が訪れたりはしない。
 けれども、ようやく開かれた壁の向こう側の世界へ向かうのも、これまでの住処へ留まるのも、好きに選べる時代になった。

 調査兵団は今、エルヴィン団長のもと、壁外への旅に使える拠点地の設立補助や地図の作成、荷馬車や移民の旅団等の護衛を中心任務とし、広く一般に出資者と志願者の規模を増やしている。
 任務に出て行く兵士たち――今風に言うと団員たち――の表情は、明るくきらきらしく、未知への探求と人類への貢献に正しく輝いていた。
 もう誰も、死と直結した使命に向き合う悲壮な顔をすることもなく。今の新兵たちには、立体起動装置の補助ベルトで締め上げられた痣もない。
 歓声に笑顔で大きく手を振りながら、まっすぐに平原へ飛び出していく一団を、リヴァイは目を細めて見送った。
 すっかり長くなった黒髪を揺らす風が、血の臭いをどこにもはらんでいないことが、愛おしい。

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 生き残って、これから先、自由に生き方を決められる。
 これからどうしたい、とエルヴィンに聞かれて、リヴァイはしばし考えて、答えた。
「……料理とか掃除とかして、野菜や花を育てて。そういう平和な生活っていうのを、やってみてもいいかもな」
 もう生きるために戦う必要がないというなら。
 これまでの人生の中では叶うはずもなかった、素朴で小さくてありきたりでつまらない、夢のような平穏の日々を。


 そして今、リヴァイはとある村はずれの小さな家で、その夢を叶えている最中である。

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 かつては兵士としての利便性を最優先した、ごくごく短く切りそろえ刈り上げていた髪を、背中に届くまでに伸ばしてみた。
 スカートを穿いて、ちょっとだけ踵のあるブーツを履いて。使い慣れた男言葉から、勇気を出して「私」と名乗ってみる。
 パンの焼き加減に試行錯誤、シチューの塩加減に首を捻り、少しずつ流通の増えてきた砂糖を使って焼き菓子を作る。
 所謂、「普通の女らしい」ことをしてみる毎日。
 ごっこ遊びをするようで気恥ずかしいが、女の自分も思っていたよりも悪くないのでは、と少しだけ自分の中の女性を甘やかしてみたくなる。
 そうして過ごすうちに、リヴァイの目からはすっかり険が抜けて、幼げな印象が際立つようになり、小柄な体躯もあいまって、今ではかの人類最強の兵士長その人だと気付かれることが少なくなっていた。

 たくさんの人の協力のもとで、平凡で平穏な生活を味わう日々。
 人類最強と振り仰がれ、英雄と祭り上げられるよりも、ずっと地味だが生き甲斐のある日々だ。
 今の生活に、この上もなく満足している。


 ただ一つ、戸惑うことがあるとしたら、
「……お前ら、また今日も私の家で飯を食っていくつもりか?」
 小さなリヴァイに合わせた小さな家の小さなダイニングに、みっちりと詰めて座っている男たちの存在だ。
「そうだね、ご馳走になろうかな」
「兵長!俺、支度手伝いますよ」
「エレンは不器用。手伝いなら私が」
「あ、兵長。三角巾とエプロン洗濯しておきましたっ」
 リヴァイの平凡なはずの生活を、わいわいと賑やかに彩ってくれる、愛すべき友であり頭痛の種。

 エルヴィン・スミス。
 エレン・イェーガー。
 ミカサ・アッカーマン。
 ペトラ・ラル。

 激戦を共に生き抜いた彼らは、兵団に残り新たな任務を全うする傍ら、どういうわけかリヴァイの家に入り浸っている。
 いくら気心も知れていて、見た目にも清潔な、美形と言って差し支えない輝かしい面子だとはいえ、総員180センチ越えの大型男だ。
 自分より40センチ以上大きな男たちに取り囲まれては、窮屈極まりない。

 かつてハンジに「小人の家に巨人が進撃してる」と大爆笑されたこの状態は、
「何度も言ってるだろう。私は誰とも結婚するつもりはない。家が狭くなるから帰れ」
「え、嫌ですよ。俺、兵長をお嫁さんにするって決めてますから」
「エレンがそこまで言うなら仕方がない。兵士長には私とエレンと二人の子どもを産む覚悟をしてもらいます」
「ちょっと、兵長を子どものおもちゃと一緒にするなよ!兵長の幸せは私が守る!」
「リヴァイを幸せにする自信なら、私が誰より持っていると思うよ」
 各々リヴァイが伴侶を定めるまで譲らないという主張から、この家で生活を始めた当初から、もうずっと続いている光景であった。


 自分が結婚をするということを、リヴァイは真剣に考えたことがない。
 まともな家庭を知らない。年齢も年齢だし、きっともう子どもも産めない。女としての魅力に溢れた体も持っていない。
 これだけ望んでくれる彼らが愛おしく思えるからこそ、NOと言い続けているというのに。
「あーもう、うるせぇ!飯は食わせてやるから、さっさと食って帰って寝ろ!明日も仕事だろ」

 分からず屋どもめとぷりぷり怒りながら、エプロンと三角巾をつけて台所へ向かうリヴァイを見送って、四人は顔を見合わせてくすりと笑った。
「エレン、笑うなよ。兵長、あれで怒ってるつもりなんだから」
「だって、兵長どんどん素直で可愛くなってくな〜って思ったらつい」
 彼女は気付いていないのだ。
 彼らが賑やかに食事をして、リヴァイに微笑みかける度に、噛み締めるように目を伏せて少しだけ笑う、その表情がどれだけ美しいものであるかを。