にょたエレンで転生夫婦。
捏造息子の話なので苦手な方はご注意を。


 往々にして、息子は母親に、娘は父親につくものだ、と言われるけれど。
 我が家の一人息子はといえば、赤子の頃から、小学生になった今でも、ちょっとどうかと思うほどパパ大好きっ子を貫いている。
 今回はそんなジュニアの話でもしようかな。


息子がパパを好きすぎる話


 神の腕を持つと名高い外科医にして、現役救命医であるリヴァイさんは、忙しい。
 普段から家でのんびりしている姿などほとんど見られないし、帰ってきても泥のように数時間眠り、がつがつとご飯を食べて、またすぐに飛び出していくような生活だから、オレもジュニアも、寂しい気持ちがあるのは否定しない。
 だけど、オレはリヴァイさんがどうしてそんなにも人命救助にひたむきなのか、よくわかっている。
 前世、人類最強と呼ばれていた彼の指をすり抜けて零れ落ちた命たちを、リヴァイさんは今も忘れてはいない。
 今度こそ、できるだけ多くの命を救いたい。
 贖罪ともいえるその願いを胸に、リヴァイさんは懸命に手を伸ばし続けている。その姿は時に泣きたくなるほど哀しくて、しかし、心から誇らしい。
 だから、寂しくてぐずるジュニアに、オレはいつも語って聞かせた。パパが助けた人たちのこと、パパがどれだけすごい人なのか、オレたち家族がパパを支えてあげないといけないということ。
 おかげでジュニアはパパとパパの仕事を誇りに思い、家族の時間がほとんど持てないリヴァイさんに、短い時間でも感謝と愛情を伝えて見送ってくれる、いい子に育ってくれた。
 瞳の色と髪の長さ以外、見た目も中身もオレと瓜二つだと皆に言われる、そんなジュニアは今、

「パパぁあああああうああああぁああああんやだやだがえっでぎてよぉ!!!」

 オレの携帯電話を耳に当てながら、ぎゃん泣きして叫んでいた。



 この一週間、リヴァイさんは学会参加のために海外出張。
 元々毎日顔を合わせられるわけでもないけれど、絶対に帰ってこないとわかっているこの期間は、まだ小さいジュニアには堪えたようだ。
 帰国予定の今日、夕食の時間に間に合うように帰宅するはずのパパを待って、ジュニアは学校から帰ってからずっと玄関で膝を抱えて座っていた。
 可愛いなぁ。
 小さな背中をキッチンから時々眺めては和んでいたオレの携帯電話に、リヴァイさんから連絡が入ったのは、そろそろ到着かな?という時間になってからだった。
 リヴァイさん、飛行機が遅れたから今日は帰れないって。
 そう言ったときのジュニアは、思わず心の中で、845年、人類は思い出した……とナレーションをつけたくなる見事な絶望顔だった。


 各国の天候の都合で、エアポートの発着順に乱れが出たらしい。
 当初の予定より随分と遅れて、何とか帰国はできたものの、首都の空港から我が家へ戻ろうにも途中で終電がなくなってしまう。夜通しタクシーを飛ばすくらいなら、一晩宿泊が延びても体が休まる方がいいだろう。
 ただでさえ疲れているところに、災難でしたね。せめて清潔なベッドのあるホテルが確保できるといいんだけれど。
 大人のオレはそう旦那様を労ったが、さすがにジュニアはそうはいかなかった。
『ジュニア、明日の昼には帰るから。もうちょっと待っててくれるか?』
「やだぁ!パパ今日帰ってくるってゆったじゃん!しくだい教えてくれるってゆっだじゃん!!」
『仕方ねぇだろう、飛行機が着かなかったんだから。宿題は明日見てやるから』
「やだやだやだ!!はやぐ帰ってきてぇ!!」
 ぴぎゃあああと遠慮なしに声を上げて泣くジュニアに、リヴァイさんのたじたじな声が聞こえてくる。
『悪かった。お詫びに明日、好きなもの何でも買ってやる。な?』
「いらないもん、パパきて!今日パパいなきゃやだ!帰ってきてくんなきゃさみしくてしんじゃう!」
 どこのメロドラ女の台詞だ。おもしろすぎる。
 疲労しきりのリヴァイさんには申し訳ないけれど、ついつい興味深く展開を見守ってしまうオレ。前世男だけど、主婦としてはやっぱり昼ドラとか好きなんだよね。
 片手でぎゅっと胸元を握って、えっくえっくと嗚咽を漏らすジュニアは、少年とは思えないほど艶っぽい。ヒロインのスポットライト浴びまくりだ。
 どうやら遺伝したらしいあざとイェーガーの資質に、さすがのリヴァイさんもぐうの音も出ず、
『…………わかった。今から帰る』
 完敗の白旗が振られた。
「パパ、ほんと?」
『あぁ。ただ遅くなるから、ちゃんと寝てろ。明日は朝から一緒にいてやるから』
「パパぁ……」
 うりゅりゅんと瞳を揺らすジュニアは、父親と電話している息子にはとても見えない表情で、きゅっと唇を噛んだ。
「パパ、わがまま言ってごめんなさい。きらいにならないで」
 それに対しての返答は聞こえなかったけれど、ぽく、と頬を染めて「うん、おれもvはやく帰ってきてねvまってるv」とか何とか言っているジュニアを見れば簡単に想像はつく。
 何しろ、旦那様の必殺技、低く甘いささやき声での「愛してるに決まってんだろうが」の威力は、このオレが誰よりもよく知っているわけですから。

 ん?息子相手に本気を出すなよって?
 仕方ないだろ、リヴァイさんは愛情の使い分けができるほど器用じゃない。そういうところがまた可愛くて、オレを虜にしちゃうんだよ。



 しかしここまで似ていると、ジュニアの将来に一抹の不安を感じてしまう。
 まぁ、あのリヴァイさんが全身全霊をかけて甘やかして愛しんで育てているんだから、パパにめろめろなのも当然だろう。
 オレとしても、同じ顔したジュニアがそこらの尻軽な雌どもとちゃらちゃら遊ぶ姿を見るくらいなら、ファザコンべったりでいてくれる方がいい。エレンサンド、なんて内心ニヤニヤできるだろ。
 とはいえ、リヴァイさんを譲ってやる気はない。
 なぁ、どこかに、リヴァイさんみたいにかっこよくて頼り甲斐あって渋くてちょっと可愛い、そういう人いないかな。この際男女は問わないから、見つけたらうちのジュニアに紹介してくれよ。
 気に入らなかったら駆逐してやるから、そのつもりでな。