エルリで転生親子パロ。pixivにネタ設定を収納してます。
ふぎゃあ、と産声をあげる赤子。
とりあげた助産師がとても元気な男の子だと微笑んで差し出したわが子を、エルヴィンはそっと抱きしめる。
ふにゃ、ふにゃ、と猫のこどものように泣きながら、父の腕を頼る、小さな子。あまり自分には似ていないその面立ちは、間違いなく待ち望んだ面影を宿していた。
「あぁ……よく間違えないで私のもとへ生まれてきてくれたね。」
私のかわいいリヴァイ。
君をずっとずっと待っていたよ。
Accueillez!, mon ange.
男の一人手で小さな子を育てるのは、とても大変ではないですか?
それは数あるエルヴィン・スミスへの問いかけの中で、最もポピュラーで、最も的外れな質問だ。
エルヴィンはいつも決まって、いやそんなことはないよ、何しろ私のアンジェはとても愛らしくて可愛らしくて愛おしい、もっともっとわがままをして困らせてほしいと思うくらいだ、子育てとは本当に幸せを与えてくれるものだね、と笑顔で答える。
実際、社会的に成功した経済力のある成人男性であるエルヴィンにとって、不足を補えるツールは今の世の中いくらでもある。
知識と情報と財力と愛情、その全てを惜しみなくわが子へ注いでいるエルヴィンには、子育てを苦悩する気持ちなどこれっぽっちもなかった。
どちらかといえば、
「はぁ……。また今日も仕事に行かなくてはいけないのか……ほんの数時間とはいえ、しばらくのお別れだと思うと、胸が張り裂けそうだよ。リヴァイ、どうかパパを癒しておくれ」
「あぅー」
もっともっとわが子と触れ合い成長を見守りたいエルヴィンにとっては、むしろ仕事のために離れる時間の方が、よほど苦痛だ。
ITをフル活用した効率特化型の会社の役員なので、朝はゆっくりとリヴァイにミルクをあげる時間もとれるし、日が落ちる前にはさっさと仕事を片付けて家に戻れる。多くの男性と比べれば、自由な時間はとても多いはずだ。
そうは言っても、もう片時も離れたくないのに!というのがエルヴィンの確かな本音であって、苦痛なものは苦痛なのだ。
ベビーベッドから温かい体を抱き上げると、リヴァイの小さな指がエルヴィンのスーツの襟をぎゅっと握る。
「だぁ、う、あー」
「そうか、おまえも寂しいのかい」
「うー」
「うんうん、今日も早く帰ってくるよ。少しだけ待っていてくれ、私のリヴァイ」
名残惜しく頬ずりをしていたら、リヴァイの手が、襟を離れてひらひらと宙を舞った。
信じられるだろうか。
リヴァイの、もみじのような小さな手が、エルヴィンに手のひらを向けて、ばい、ばい、と振られたのだ!
「おぉ……アンジェが私に手を振った!なんというすばらしい日だろう!惜しむらくは今この瞬間に私がビデオを撮っていないことだ!なんということだ!」
エルヴィンは、奇跡のように愛らしい瞬間に立ち会えた歓喜を表し、リヴァイをたかいたかいしながらルリラリ踊りまわった。
なんてかわいいんだ、リヴァイ!
なんて愛おしい子だ、リヴァイ!
「ちょ、ミスター!?」
あまりの騒ぎに、キッチンからベビーシッターのペトラが飛び出してくる。
「落ち着いてください!首がすわったとはいえ、そんなにもくるくる回っては、ぼっちゃまが酔ってしまいます」
彼女は、ホームヘルプサービスの会社から派遣されている。まだ若いが保育の専門資格も持っていることと、赤ん坊のリヴァイを尊び誠実に接してくれる姿勢が気に入って、ベビーシッター兼任として専属契約を行っていた。
慌てる彼女に頓着せず、エルヴィンは目尻を下げてリヴァイを抱きなおし、うりうりと頬ずりを繰り返す。
「ペトラ、君は見たかい。この子が寂しがる私を元気づけようと、ばいばいをしたんだよ。どうかな、シッターとして知識のある君に聞きたいのだけれど、こんなにも小さな子がもうばいばいができるだなんて、リヴァイは天才なんじゃないかな?」
親ばかというものを全力で体現するエルヴィンは、今にもとろけてしまいそうに笑んでいる。こんなにも幸せそうな彼に、ただの偶然じゃないですか、などと冷たいことを言える人がいるだろうか。
「えぇ、ミスター。ぼっちゃまは、ミスターがとっても大好きなんですよ」
おとなしく頬ずりをされながら、リヴァイの手がエルヴィンの高い鼻をよしよしと撫でる。微笑ましい親子の姿には、この上もない幸せが溢れていた。