「か〜ず〜さぁ〜んっ」
 それは昼休みのことである。廊下側の席で座っていたカズの真横の窓から、春爛漫に笑顔の昭栄がぴょこりと顔を出した。
「寒い!!」
「ぎゃっ痛かぁああカズさん窓閉めんで顔挟まったとよーーー!!!」
「寒かっちゅーとろーがボケ!喋るなら中入れ、そこにおるなら帰れ!!」
 いくら昭栄の脳内が万年常夏であろうとも、初冬の気候は変わらない。開けられた窓から吹き込む冷たい風をぴっちりとシャットアウトしたカズは、いそいそ隣に椅子を引きずってきた昭栄に思いきりため息をつく。
「まーたお前ここで飯食うんか?友だちおらんと?」
「そげんこつなかよ。カズさんと一緒がよかなんで・す!」
 擦り寄る昭栄を力いっぱい押しやっているカズも、何だかんだ言いつつ昭栄が来るまで待っているのだから、傍から見ると微笑ましい光景だ。
「カズさんカズさん、見てこれ!俺ん作った卵焼き!」
「へぇ、すごかやん。ぱっと見食えそうな色しとるぞ」
「でしょー!絶対うまかけんカズさん食べてみて!はい、あ〜……って痛!!カズさんちょ、痛い痛い抓るのやめて何ばしよっと!?」
「何しよるは俺ん台詞じゃ!お前ん手作りなんぞ危なかもん俺に食わせようとすんな!!」
「ひ、酷かぁカズさん!!危なくなかですよ、ちゃんと味見もしとるけん大丈夫です!」
「胃腸が掃除機なお前じゃ意味なかやろ!」
 ぎゃいぎゃいとじゃれ合う二人に、暖房が流す風のように温かい視線が注がれる教室の中。
「……カズ、タカ。頼むけん飯ぐらい静かに食わせてくれ……」
 カズの真向かいに座る城光は、一人うんざりとこめかみを揉み解していた。

 そう、傍から見ると微笑ましくとも、巻き込まれる立場としてはたまったものではなく。
「よっさぁん、何とか言ってくださいよ!俺ん卵焼きカズさんが食ってくれんとよー!」
「やけんそげん危険物毒見もなしに食えるかって言っとると!」
「じゃあよっさんに味見してもらうけん!そしたらよかでしょ?」
 案の定矛先を向けられて、城光はあからさまに嫌な顔をする。
 彼の名誉に懸けて言っておくが、城光は決して昭栄の作った物なんか食べたくないと思ってそんな顔をしたわけではない。
 嫌だなぁと思ったのは、
「……何それ、俺に食わせたくて作ったんやなかと?」
「えっ……だ、だってカズさんが」
「俺に作ったなら、俺が食うって言うまで粘らんか!やけんお前は詰めが甘かって言われると!」
「か、カズさぁあああん好いとるとーーー!!!」
    あー、やっぱりこうなった……。
 毎回毎回、何かにつけて、自分を引き合いに出してはいちゃつく傍迷惑なバカップルが、今日もまたこうして目の前でベタベタする光景を見ることだった。
    そういうことは、二人きりでやってくれ。
 常にそう思っている城光であったが、彼は不幸にしてカズの幼馴染であり皆の慕うキャプテンで。
「はい、あーん……味はどげんですか?」
「ん……まぁまぁ?」
「マジですか!俺カズさんのお嫁さんになれあだだだ!?」
「アホ言っとんな、こげん図体デカか嫁いらん!!」
「あ゛〜〜〜もう!!せからしかって言っとろーがぁあああ!!!」
 この苦難から解放される日は、おそらくまだまだ遠いのであった。



あや様へ相互お礼に捧げます、『ツンデレカズさん』です!
ツンデレ……かなこれ……???
カズさんのツンはやっぱりぼてくりだろうということで、最初から最後まで殴られ続ける可哀相な昭栄の話にしようと思っていたはずが(酷…!) 結果的にバカップルに迷惑をかけられるよっさんの話になってますね。ミラクル★
あや様のご期待に少しでも応えられているといいのですが…宜しければ受け取ってやってくださいませー!
これからもどうぞ仲良くしてやってくださいv