*現代パロ。政宗高校入学式話の前、お引越しの話。


 小十郎と一緒に合格発表を見に行ったその足で、政宗は不動産屋へ突撃をかました。
 政宗の合格に感極まっていた小十郎は、あれよあれよと進む新生活への幕開け準備にまともに口も挟めないまま。
 気付いたら荷物をまとめて、一年間慣れ親しんだ狭くて男臭い寮の部屋から、どう考えても発表前から完璧に根回しされていただろう(なにせ発表日には既に鍵を受け取るだけの段階だった)エレベーター付の新築マンションの一室へ。
 先に到着していたらしい政宗の腕を広げての大歓迎に、小十郎は我が身に起きた唐突な変化に戸惑いを通り越し、力ない微笑みで返した。
 仕方がない。この人には何を言っても、絶対に勝てないようにできている。

 さて、これから始まる二人の愛の共同生活に必要な物といえば何だろう。
「とりあえず食器はpareだろ。揃いのクッションも置きたいし、あとはー……」
 fancyな写真立てでも飾れば完璧?思案顔でつぶやいた政宗に、小十郎が遠慮がちに声をかけた。
「……あの、政宗様。」
「oh、わかってるぜ小十郎!ちゃんとお前の好みも聞いてやるよ、何色がいい?」
 浮かれきった政宗には、そうではなくて無駄遣いは控えましょうなどという苦言は意味を成さない。
 色とりどりの食器が並ぶ店内で、まろいオレンジ色の照明に照らされた政宗の笑顔。カートを押しながらついてくる小十郎を振り返り、マグカップを手に首を傾げている。
    なんと無邪気で、可愛らしいお方だ。
 幼少の砌より兄として遊び相手として共に育ち、将来はこの方のお役に立てるようにと勉学や鍛錬に励んでいる。小十郎にとって特別な存在である政宗が、成長して尚こうして懐いてくれるのは素直に嬉しかった。
 奥州から自分を追って来てくれた上に、こんなむさくるしい男と一緒に生活することを飛びついて喜んでくれるのだから、可愛くないはずがないだろう。
「小十郎は、若草の色がようございます。」
 甘いと詰るなら、好きにすればいい。嬉々として店内を進んでいく政宗のこの幸せそうな瞳に、勝るものなど何一つないのだから。


 政宗の物は青と藍。小十郎の物は若草色。家具は白と茶色に統一されて、全てが揃い片付いた数日後には、まるでどこかのモデルルームのような小洒落た空間が出来上がった。
「よし、まぁまぁだな!」
 政宗が額に汗して満足そうに笑んだ一方で、小十郎は疲労にぐったりと肩を落とす。
    無駄遣い、なんてレベルじゃねーぞ……!
 財閥と言って差し支えない生家に、息子溺愛の父を持ち、一度こだわるととことん嵌まり込む癖のある政宗には、一般庶民の小十郎の心労は想像もつかないだろう。
 生活用品については、普段使いのものは消耗品なのだからと100円ショップやホームセンターで済ませた。しかしソファやクッション、ラグマットなど、政宗がどうしても譲らなかった嗜好品は、汚れが気になってとても気軽に扱えない。
 この部屋を見て、高校生の男二人が暮らす部屋だと、誰が思うだろうか。絶対思わない。
「なぁ小十郎、100円shopってのもなかなか馬鹿にできねーもんだな。こっちの皿なんて結構いいdesignしてるぜ?」
 それでも結局、にこにこと食器を並べる政宗を見れば、それでいいかと思えてしまう。
「政宗様のお気に召す物があったなら、何よりでした。」
 穏やかに微笑んで皿を受け取り、食器棚へ仕舞う。あくまでも政宗が使いやすいように、政宗の実家での配置と寸分違わず。何も言わずともわかってくれるgentleな小十郎を、政宗はうっとりと見つめていた。
 多少の小言はあったものの、結局は政宗好みに仕上がった新居。政宗を尊重してくれる優しい小十郎。最高の滑り出しだ。

 愛の!共同生活の環境は整った。次にすべきことは、と小十郎に見惚れつつ考えて、政宗が出した答えはこれである。
「小十郎、夕飯は何が食いたい?ちゃんとmy包丁も持って来たし、これからは毎日俺がうまいもん作ってやるからな!」
 『男心は胃袋から掴め。』昨日までは外食や買ってきた弁当で済ませていたが、キッチン周りの整理もついたことだし、先人の格言には従わなくては。早速食材の調達に出かけようと、政宗は機嫌よく玄関に向かった。
 しかしこれに慌てたのが小十郎。今更政宗の料理の腕を疑いはしないが、その前に大きな不安が残っている。
「ま、政宗様!お待ちください、買い物の前に、お話したいことがございます!」
「Ah?何だよ、歩きながら話せばいいじゃねーか」
「いいえ!これから先、共に暮らしていく上での、大切な話でございますれば…!」
 腕をとられて、真剣な顔でそう言われたら。
    初めての、二人の 家 族 会 議 ……!!!
 政宗は完全に舞い上がった。

 共に暮らす、大切な話、政宗にとって甘美すぎる響きの言葉で(無意識に)政宗を篭絡した小十郎は、テーブルに向き合って座るとスーパーのチラシを何枚も取り出す。
「料理において食材にこだわることは大切なこと。しかし生活の中で、家事として行う料理においては、もう一つ大切なことがあるのです。」
 そう、それは『より良いものを、より安く』の精神。どうにも世間ズレしたところのある政宗の前に特売のチラシを広げて、小十郎はいかに政宗を納得させるか、素早く頭を巡らせる。
「昨今、カリスマ主婦なる脚光を浴びる女性たちがいるのをご存知ですか?」
「カリスマ主婦って…あの節約術とか便利なお掃除グッズとかの?」
 知ってはいるようだが、明らかに興味のなさそうな声だった。御曹司の政宗には節約も身近な物で再利用お掃除グッズも、縁のない世界である。
 しかし、これからはそんな価値観のままでは困る。いや生活費を負担してくれるという政宗の父は別段困らないだろうが、何より小十郎の胃に障るのだ。
「政宗様、彼女たちが高く評価されるのは、何も金額が云々という話だけではないのです。」
 興味もなく先も見えない話に、政宗は訝しげに眉根を寄せている。しかし小十郎は落ち着き払って、
「節約というのは存外に難しいもの。それを効率よく為すには、頭の回転の速さや理論的な思考、柔軟な発想力、価値を見抜く力……簡単には挙げられないほどの様々な能力が必要となります。それらを備え家事をこなし、尚且つその知識を他者へ分け与える尊貴な精神の持ち主、それがカリスマ主婦!」
 カリスマ主婦の凄さについて、拳を握って熱く語った。兄や姉なら爆笑するだろうが、純真な(と小十郎は信じ込んでいる)政宗は圧倒されて聞き入っている。
「政宗様と共に暮らせるならば、政宗様がご立派な後継者となられるよう、また小十郎自身が政宗様のお役に立てる人間に成長するためにも、小十郎は家事においても、政宗様と共に天下を目指しとうございます!!」
 勢いに乗せて差し出した参考文献『天下一!カリスマ主婦・まつ先生の楽しい家事修行』を、政宗はしばし呆然と眺めて。

「……お前の気持ち、受け取ったぜ。俺たちは二人で天下を取る。その誓い、家事においても伊達じゃねぇ!!」
「政宗様……!」
「小十郎、俺が昇る道、遅れずについてこいよ!!」
    お前のためなら、この花嫁修業、立派にこなしてやるぜ!!!
 小十郎の手をぎゅっと握って、力強い笑みを浮かべた。

 これは二人の最初の家族会議で提案された『明るい家族計画(初級編)』なのだと受け取った政宗の心の内を、小十郎は知る由もなく。
「では政宗様、早速より良くより安い食材を手に入れるべく、吟味致しましょうぞ!」
 不安要素を払拭し安堵している小十郎が、新たな胃痛の種に悩まされることになるのは、そう遠くない話である。



相互お礼で「現代小政でほのぼの」とリクいただいてたんですが…。
完全にギャグ(しかも頭悪い)な上に小政っていうかまた小←政かよ!っていう。 入学式話を気に入っていただけたということでその設定にしてみたんですが、 やはりこれが敗因だったかもです…(笑)
愛だけは、暑苦しいほど詰め込みました(いらね)

月見様、こんなのでよろしければ受け取ってやってくださいませ…!
ぜひこれからも仲良くしてやってください!