見上げる空は何処までも青く、過ぎる風は心地良い。思えば此処暫くこうしてゆったりとした時間をとることは叶わなかったと流れる雲を見ながら思う。
 日頃軍事に政務に忙殺されることの多い彼がこうして心身ともに安らげる場所、其れがこの庭先にある一反の畠。強面な外見に似合わず土を弄る事が好きな彼の、唯一の楽しみ。決して楽とは言い難い其の作業も彼にとっては息抜きに等しい。

「兄さま、そろそろ休まれませんか?」

 涼やかな声に呼ばれ、彼―――片倉小十郎―――が作業の手を休め振り返る。

「すまねぇな、八重」
「いいえ、私は何も。兄さまこそお疲れではないのですか」

 小十郎が縁側に腰掛ければ八重と呼ばれた其の女子がゆったりと微笑む。小十郎を兄と呼ぶ彼女は勿論彼の血の繋がった妹だ。この兄妹実に仲睦まじいと評判の二人で、八重が未だに嫁がないのは兄である小十郎が離さないからだと専らの噂である。勿論彼にはそんなつもりは無い心算(尤も生半可な男に大事な妹を渡すつもりは微塵もない)だし、彼女の眼鏡に適った相手が現れないだけ(彼女の基準が、この兄だと言う事も実は大きな問題なのだが)なので、別に慌てるつもりもない。
 今はこうして兄妹二人暮らしていければそれで幸せなのだ。他者が何を言おうが二人は今の生活に何の不満も無いのでどうしようもないだろう。

「いや、大丈夫だ。こうして土いじりをするのも気晴らしになる」
「本当に、兄さまは畠がお好きなのですね」

 湯飲みを差し出しながらころころと鈴のなるような声で笑う妹を見る彼の瞳は、普段の彼を知るものからすれば異様にすら映りかねない、穏やかなもの。
 彼女も、そんな兄の表情を見て今このときの穏やかな時間を噛み締めるのだ。

「然し何時もすまねぇな。留守の間、こいつの世話まで頼んじまって」
「いいえ、兄さまが大切にしている畠ですもの。私にとっても大切なものですから」
「じゃあこれからも甘えるとするか」

 そう言いながら浮かべる笑みは、まるで悪戯っ子のような、何処か幼さを残した其れで。

「ええ、兄さまのように上手には出来ないですけど」
「何言ってやがる」

 今が乱世と言うことを一瞬忘れそうになる程、穏やかで、静かな時間が其処にはある。
 小十郎にとって、八重の存在は安らぎそのものなのかもしれない。

「よし、じゃあ続き、やってくらぁ」

 ありがとよ、と一言添えて湯飲みを盆に戻すと、立ち上がり伸びを一つした、其の時。

「OH!!相変わらず土いじりかよ小十郎。」
「政宗様、どうされましたか!?」

 勝手知ったる他人の家とばかりに裏木戸から入ってきたのは、彼の主であり、この地を治める領主、伊達政宗その人で。

「お久しゅうございます殿様。ご健勝な様で何よりですわ」
「よぉ、八重じゃねぇか。相変わらずCUTEだな」

 小十郎と血が繋がってるとは思えないぜ、と笑いながら言うかの領主に、悪意など全くない。
 政宗様、と其の名を呼ばれ、此処にきた理由を思い出したかのように小十郎の方へ向き直る。

「たまには遠乗りにでも付き合え、小十郎」
「政務の方は宜しいのですか?」
「ああ、ちゃんと終わらせてきたぜ?次の戦のことで話もあるしな。休みのところ悪ぃが……」
「いえ、そういう事でしたら―――八重」

 はい、と返事を返した彼女は何もかも承知していると言った表情で。
 「支度をしてまいりますので、申し訳ございませんが少々お待ちください」と政宗に告げ奥に入る。

「すまねぇな八重。折角の休みなのに」
「いいえ、兄さまこそお気をつけて」
「ああ、じゃあ言って来る」

 小十郎は挨拶と共に八重の頭をひと撫でして、そんな兄を彼女は笑顔で送り出す。

「さて、兄さまはきっとお疲れで戻られるでしょうから……」

 戻られたら肩でも揉んで差し上げましょうか、
 そんな事を思いながら、彼女は庭先の畠を見つめるのだった。


Beautiful Days



紅騎おねえさまにいただきました、片倉兄妹。素敵すぎます耐えられませんごめんなさい。ひぎゃぁあああ!(悶)←怖いっ!!
「妹ヒロイン・八重ちゃんに労わられ癒されちゃう小十郎」
どう考えても個人の趣味丸出しなリクエストだったのですが、快くお受けくださったばかりかこんなにも……ひぃいい(マジでやめろ)
妹の前では穏やかな瞳のお兄ちゃんこじゅ…そんなお兄ちゃんを支える可愛い妹八重ちゃん……!
最後に筆頭が出てくる辺りも、さすがおねえさまとしか言いようがありません!私のツボを心得ていらっしゃるわ!(笑)
何回読み返してもにやっにやしちゃいますもう。すいません自重できない子です。
背景画像もあまりにイメージぴったりなのでお言葉に甘えて一緒に頂戴しました!自作とかおねえさますごすぎます…尊敬!!
素敵な兄妹を本当にありがとうございました…!!また機会があれば続きが読みたいでs(ごらぁああ!!)