陸矢様にいただきましたリクエスト、「もてもてこじゅろ」
調子に乗ってこじゅろ社長ネタで捧げます!!


Love saves The Earth !!!!!


 一次面接で「おたくの社長さん目当てで志望しました★」と前代未聞な回答をしてのけた伊達政宗の手元に、なぜか役員二次面接の通知が来て。
 初対面の面接場面で、その低い艶のある声とか身体の芯まで見透かすような鋭い眼とか、そのくせ「俺がお前が目当てにしていた社長の片倉だが、実際に会ってみたらどうだった?」なんて悪戯っぽく微笑む茶目っ気とか。
 あまりにも好みどストライクなその男に、改めてめろりんと虜になってしまった。
 そうして届いた採用通知。二週間の研修期間を経て、今日から正式な配属先での仕事が始まる。

 そんな輝かしいはずの日、政宗は暗雲を背負って一人の男を睨んでいた。
「…………Hey、アンタ今何て言った?」
 ぴきりと青筋を立てる政宗にも、相手の男は涼しい顔でひらひらと手を振る。
「だーからー、今期入社の新人くん。アンタは営業部配属だから。ここは秘書室と社長室のフロア、アンタが来るとこじゃないの。さっさと2Fの営業部に向かいなよ」
 あー忙しい忙しいとぼやきながら、社長室に続く廊下に陣取って動かない男。面接でも社長の隣に座っていた、秘書室長の猿飛佐助だ。
「何で俺が営業なんだよ!?秘書希望って言っただろーが猿!!さてはアンタ陰謀巡らして俺と社長を引き離そうとしてんだろshit!!小姑!!」
「アンタ馬鹿!?新人がいきなり希望配属叶うわけねーだろ!大体上司の俺様に向かって猿呼ばわりするような新人、絶対うちじゃ使いたくないね!入社できただけありがたく思いなこの色ボケ!!」
 ぺいっと襟首掴んでエレベーター前の廊下に放り出された政宗は、
「おっとごめんよ!おーい片倉さーん今日も宅配便どっさり来てるよー。よっ男前!」
 ポニーテールの宅配業者にカートで吹き飛ばされ、
「貴様、謙信様に飛びつこうとするなど、どういうつもりだ!よもや片倉の会社にこのような不審者がいるとは……謙信様!即刻契約を打ち切ってやりましょう!」
「おやめなさい、かすが。かたくらはしんらいできるおとこです。ふりょのじことはよきせずおこるもの。かたくらのせいではありません。」
「け、謙信様……」
「ふそくのじたいにもわたくしをまもる、そなたのたのもしさ…かんしんしましたよ。」
「!有難きお言葉…はぁあああん謙信様ぁああああvvvvv」
 宝塚的輝きを放ちながら微笑む謎のほっかむり男性(?)を追いつつ身悶える美女のヒールで蹴飛ばされ、
「…………市、受付に戻るけど……あなたは何階?」
 運よく転がり込んだエレベーターの中では、
「あなた……気をつけなければ、だめよ。大切な取引先の社長様に失礼なんてして、片倉社長に迷惑をかけたら、市……許さないから……」
 奇妙に仄暗い虚ろな瞳の美女に脅されて。
 心身ともに散々な目に合ったトドメに、
「新規配属の伊達政宗くん、どこで油を売っていたのかな?僕の部下になるからには、学生気分はそこまでにしてもらわないと」
 紫メガネのやけに色白い営業部長に、爬虫類の目で睨まれた。なぜかその手には鞭がある。
「君の話は、猿飛くんや人事部長から色々聞いているよ。そんなにも片倉くんに近付きたいなら、まずはその甘ったれた根性を僕直々に指導して叩き直してあげるから、覚悟しておくことだね」


「おぅ政宗、どうしたよ?やけにボロボロだけど大丈夫か?」
 朝から災難続きで灰色になっていた政宗に、新入社員仲間で眼帯仲間の元親(名字も聞いたのだが、何だか複雑でよく覚えていない)が声をかけてきた。
「oh……元親か。ちぃと色々あってな」
 疲れきった政宗を元気づけようと、とりあえず飯だ!うちの社食はすげーうまいって評判だぜ!と背中をバシンバシン叩く。
 陽気でポジティブな元親だったが、『食堂のまつ姉ちゃん特製日替わり定食』を手に座り、朝からの顛末を聞き終えた頃には、引き攣った笑顔を浮かべていた。
「政宗……おめぇってやつは、マジで何つーか、勇気あるよなぁ」
 実は元親、政宗のグループ面接での奇行を耳にして、お互い受かっていたらおもしろそうだし声をかけてみようと思っていた。
 思っていたからこそ、意外と気の合う同期生として仲良くなったのだが、
「あのよぅ。正直、俺も少なからず社長に憧れてこの会社に入った人間だから、お前の気持ちもわからんでもねぇが、ちっと行動が露骨すぎんじゃねぇか?」
「What’s it meaning?」
 熱烈な社長ファン(という表現にしておきたい)の割に、周囲の知識が全くない政宗に、元親はため息をつきつつ「いいかよく聞けよ!」と指を立てる。
「俺やお前だけじゃなく、社長に好意を持ってる奴が、この会社にはごまんといるわけだ。」
 猿飛秘書室長は、昔からの片倉社長の友人で、直接勧誘を受けて発足時からの筆頭社員。美人受付嬢で名高い市は、兄が運営する会社が倒産の危機に陥った際に援助してくれた片倉社長に恩を感じて、高校卒業後すぐに入社している。
 中でも、竹中営業部長などは、学生時代からひどく頭が切れるものの身体が弱くて、就職活動もままならなかったところを片倉社長に勧誘されたとか。今では夢と野望に燃えてガツガツ業績を伸ばす鬼の営業部長だが、「僕が元気に働いて秀吉を養えるのは、全部片倉くんのおかげさ」と自ら言って憚らない。
「それにほら、見てみろよ」
 示されるまでもなく、ざわっと食堂内の雰囲気が変わる。
「社長!お疲れ様です!」
「社長、先日はありがとうございました!」
「社長、よかったらご一緒しませんか?」
 長い足で颯爽と歩く片倉社長に、男女関わらず皆が瞳を輝かせて声をかけている。それぞれに軽く手を上げたり時には微笑を返したりする社長の一挙手一投足に、全員がほうっと見惚れる始末。
「片倉殿、ようやくお昼にございますか?休憩はしっかりと取らなければ、身体を壊してしまいまする」
 もうっとまるで弟を諭すかのように言う食堂のまつ姉ちゃん(夫君は営業一課の前田副課長)すら、
「わかってくださったならば、宜しいのです。さぁ、まつ特性の野菜たっぷり定食、片倉殿特別バージョン。お腹いっぱいお食べください!」
 にっこり優しい笑顔で特別サービスを付けていた。
「……な、わかっただろ?半人前が露骨に社長を追っかけ回してみろ、社内全員が敵になっちまうぞ」
「oh…………Jesus」
 なるほど、朝からの災難と、異常に厳しい竹中部長の指導、ついでに課内の女性陣のツンと冷たい態度(一部からは妙に興味津々な目で見つめられたが)などなど、入社から今日までの諸々の疑問がすっかり解決。
 先行きに暗雲、どころかお釈迦様の手のひらが立ちはだかったようだった。

 さすがの政宗も項垂れるほどの絶望感に、
「おぉ、片倉社長殿ぉ!!奇遇でござるな、某ロッカーに財布を忘れてしまって、これから昼食をとるのでござる!あれなるは元親殿に政宗殿!採用いただいたお礼も兼ねて、是非我らと一緒に食べましょうぞ!!」
 やけに明るく元気な声が、思ってもみないアシストをくれた。
 がばっと顔を上げて見れば、さぁさぁ!と笑顔全開で社長の背中を押しつつ、「まつ姉ちゃん殿、某は日替わり定食と激アツカレーとんかつ盛とてんこもり魚介丼と甘辛みたらし団子3皿でお頼み申す!」としっかり注文も忘れない、新入社員仲間の真田幸村が。
 押されている社長も、初めはあっけにとられた表情だったが、苦笑しつつもわかったわかったと声をかけている。
 ちなみにその後ろでは、数多の社員からの羨望と嫉妬の眼差しが痛いほど向けられているのだが、真田は全く気付かず、片倉社長殿とお話したいでござる!などと言って火に油を注いでいる。大物だ。
「まったく、真田の純真さには困ったもんだな。俺が一緒じゃくつろげねぇかもしれねぇが、ここいいか?」
 政宗の隣にトレイを置いて、少し首を傾げて言う片倉社長から、ふわっとかすかに香水が香る。深い森のような静かで重くわずかに甘い、なんとも大人でセクシーな香り。
「お、ぉおおおおおーけー!もちろんうぇるかむだぜどんうぉーり!じょいなす!!」
 たどたどしい上に舌が縺れた返答に、不思議そうに笑うその表情も、男前過ぎる。
 お茶を汲んでくると自らドリンクコーナーに足を向けた社長の背中に、少年のような弾んだ目で見入っている元親の耳を、政宗がぎっと引っ張った。
「ぎゃっいてぇ!!何すんだコラ!!」
「never mind. 俺は決めた。諦めねぇぜ」
 大きなお釈迦様の手のひらは、野望と見栄では抜け出せなくても、政宗には愛があるのだから。



前回小話で書いたとき、社長がこじゅろなのもわかんないわ、政宗様がまだ社員じゃないわで散々だったので(笑)
かなり遅くなってしまいましたが、もてもてこじゅろ社長にトライさせていただきました!
キャラを欲張りすぎてリテイクすること何度目か…もてもてこじゅろってどうしてこんなに楽しいの…!
陸矢様、もてもてこじゅろスキーとして、ぜひぜひこれからも宜しくお願い致しますv