5万打感謝企画6「ジャイアンシリーズ、できてる二人の話」
畑仕事を趣味とし、このマンションでもベランダ菜園に勤しむ小十郎の朝は早い。夏に近付いてきた今日この頃は、うっすらと夜明けを知らせる鳥の声とともに自室のドアを開けベランダに出る。
しかしその日の目覚めは、いつもと違った。
『小十郎さん…はぁああん瑞々しい!ぼくに食べさせてくださーい!』
「Noooo!!!! 誰がこんなむちむち大福に俺の小十郎をやるかよ!てめーなんかこうだ!こうしてやる!」
TV画面を前に眦を吊り上げる政宗の怒りの叫びと、ふぎゃーごべんなざいー!!と泣き叫ぶ情けない男の声。
リビングからもれ聞こえてくるそれらの音に、小十郎は深くため息をついた。
ジャイアンと幸せな朝。
「こじゅー、小十郎、ごめんなさいってば!だってせっかく小十郎がレベルマックスいった記念の凱旋にこじゅvsこじゅを楽しんでたのに、あの鍋野郎が『小十郎のアレが食べたい』とか隠語かましやがるから」
「お前ほんとに反省してんのか朝っぱらからおかしな発言してんじゃねぇ。というかゲームと現実混同すんなややこしいから」
徹夜でゲームに熱中していたらしい政宗は、腫れぼったい目をしょぼしょぼさせつつ、呆れて背を向ける小十郎に縋って、だってよぅなどとむぐむぐ何やら言い訳している。
今は連休で、今日は確かに学校もない。政宗はバイトも休みの日らしいから、徹夜で遊ぼうが何しようが、まぁ悪いことをしているわけでもなし。
とはいえ、爽やかな朝に似つかわしくないこの会話を強いられている側としては、がっくり縦線でも背負いたくなるというもの。
「こじゅろ、怒ってるのか?俺がうるさくしたから眠れなかった?」
コーヒーを淹れつつ朝食の用意をする小十郎の背中にひしとしがみつく政宗の声が、涙を帯びて湿っていく。
付き合いだして、同棲もしていて、もう何年も一緒に過ごしているというのに。政宗は外でのジャイアンぶりはどこにいったのだと不思議になるくらいに、未だに小十郎にはしおらしく健気だ。
あうあうと半泣きで謝る政宗に、いやポイントはそこじゃねぇんだけどなどとやり返す気にもならず、
「……徹夜なんかするな。目に負担かけて、何かあったら後悔するのはお前なんだぞ。俺だってそんなこと、絶対に嫌だからな」
俺も甘くなったもんだと心中でひとりごちながらも、身を返し政宗を抱きしめてやる。
「こじゅ……俺のこと、心配してくれたのか?」
「バカヤロウ。そのくらいわかれ」
うるうるキラキラ見上げてくる政宗は、そっけない返答にもぱあっと顔を綻ばせた。ありったけの喜びを込めた抱擁で小十郎の首を羽交い絞めにして、
「小十郎、今日も大好きだ!おはようのKiss!」
心なしか青ざめてぐったりしている愛しのダーリンに、ぶちゅっと朝のあいさつをかました。
溢れる愛情で天に送られかけた小十郎の代わりに、ご機嫌マックスの政宗が腕をふるった朝食が並ぶ。今日は遠藤からお土産に貰ったいいベーコンを使って、洋食フルコースだ。
朝はしっかり食べる派の小十郎に合わせて、政宗の生活習慣も大きく変わった。一人暮らしをしていたときは、朝食はシリアルかヨーグルトしか入らなかったのに、今では二人でしっかり全皿食べきってしまう。
おかげで最近肌艶がいいと悪友連中に評判である。
まぁ、理由はそれだけじゃないけどな。うふふ!
にまぁ〜〜〜といきなりおかしなかんじに笑い出した政宗(何を考えているかわかってしまうのが悲しい)を黙殺で流しつつ、小十郎は焼きたてパンにかぶりついた。もちろんこれも政宗の手作りだ。とてもうまい。
政宗の妄想癖と下品な方向に流れがちなピンク思考は、生まれ持った性質だと思って受け入れるしかない。受け入れてしまえば、多少アレだが一途で可愛らしいと思えてくる。
元親辺りは「アニキ……それでいいのかよぅ!」と涙を流すかもしれないが、小十郎はそうして政宗の全てを可愛がるに至ったのである。
「小十郎、今日は畑?お弁当つくってもいいか?」
「あぁ、助かる。昼は和食がいいな」
「OK, darling!そうだ、俺もついでに北条のじーさんに本借りに行こうかな」
小十郎は今、大学の教授のツテで紹介された北条氏から、跡継ぎのいない農地を無償で借り受け、趣味と実益と研究を兼ねて手入れをしている。しかも北条氏は古書収集と武道が趣味だったため、政宗もちょこちょこ入り浸っていた。
とはいえ、小十郎のいないときに政宗が北条家に顔を出すことはないのだから、何が目的で何がついでなのか、とてもわかりやすい辺りが可愛らしいところである。
「一緒に行くのはいいが、一応北条のじーさんの相手もしてやれよ。あの人も普段話し相手がいなくて寂しいんだから」
「Boooo!風魔は介護の専門学校だっけ?連休だし戻ってきてねぇかなー」
ぶちぶちと文句を言いつつも、会えば仲良くケンカしている二人の様子を知っている小十郎は、くすりと笑って目を伏せた。
その表情に、きゅきゅん!と胸を高鳴らせた政宗が、思いきり身を伸ばしてキスをする。
「ごちそうさまのKiss!」
「……オムレツの味がした。」
複雑な心境を示した小十郎に、にぱっと笑う。
「歯磨きしたら、準備して、弁当もって、いってきますのKissだからなv」
「同じところに行くのにか?」
本当にお前、毎日毎日飽きないな。そう言いつつも、小十郎も穏やかに笑い返して。
「…………こじゅも、オムレツ味」
「お返しだ」
悪戯なドヤ顔にうっとりと幸せをかみしめる。
あぁ、俺って愛されてる!
「今すぐベッドに連れ去られたい」
「口に出てるぞバカヤロウ」
う、うぉおおおおはずかちぃいいい(ごろんごろん)どどどどうでしょうか。
ちゃんと、デキてますよね!←えぇえ(笑)
本編の方ではまだまだ先の長そうな二人ですが、いつかこうなるなら安心ってものです(あれ他人事?)
普段が報われないジャイアン様なので書いててうひゃあー!と照れてしまいましたが(笑)すごく楽しかったです!
とらねこ様、リクエストありがとうございましたvvv