5万打感謝企画4「Midnight Lover で、二人を見ている第三者の話」


 オープンテラスの爽やかな木漏れ日の下で、男二人がランチをしているとして。
 周囲の女の子同士のグループやカップルたちのようにきゃぴきゃぴまではいかなくとも、この陽光にふさわしい晴れやかな雰囲気になるだろうか。
「おい毛利、アンタその能面なんとかなんねぇのかよ。飯がまずくなるだろうが」
「文句があるなら同席しなければよい。我とて貴様と昼食など願い下げよ」
 ……なったかもしれないが、この二人では望むべくもないことであった。


Midnight Lover .... Thursday


 片や刑事の長曾我部元親。片や検事の毛利元就。
 出身が近い地方だったり、名前が似ていたりする縁なのか、元々コンビと呼ばれ同じ事件を担当することが多い二人だが、その相性はすこぶる悪い。
 とは言え何かとタッグを組む立場なのだからと、当たり障りのない関係くらいは築くべきではないかと考えるのは、元親の人情派たるところで。
 こうしてたまたま、息抜きに出てきた店で行き合ったりすれば、無視するのも落ち着かず、同席するのは元親からだった。
 まぁ、毎度毎度、もう絶対関わらねぇ!と息巻いて署に戻ってくるほど後悔するのだけれど。
 ついでに言えば、超絶合理主義に偏った元就にしてみれば、なぜわざわざ性の合わない相手と関わろうとするのか、そういうところが理解不能だったりするのだけれど。
 周囲は「元就が元親を嫌っている」と認識しているようだが、元就としては、自分を曲げてまで合わせようとはしていないものの、随分大人になって寛容に接してやっているつもりだ。
 普通、わざわざ自分から同席しておいて、てめぇと食うと飯がまずいなどと言われたら、「何生意気言っとんじゃおんどりゃあ!!」とぶん殴ってもいいくらいだろう。
 ともあれギスギスした昼食も残りあと一口なのだからと口を噤んだ元就に、
「……おいあれ、鬼の片倉じゃねぇ?」
 マイペースな元親はケロリと表情を変えてほら見ろ!とべちべち腕を叩いてきた。
「えぇい、落ち着かぬか!貴様ガキじゃあるまいし」
「だってよ、見ろって!片倉のヤロー、女とデートしてやがる!くそぅ!!」
「…………何だと?」
 見れば、テラスの反対側の隅の席に、休日らしくラフな格好ながら目立つ体格と頬傷の男は、確かに弁護士の片倉小十郎だ。

 同席しているのは、女、というよりも、少女。
 少し茶の入った今時の髪型ではあるが、ワンピースを清楚に着こなして、控えめに微笑みながら、潤んだ大きな瞳で小十郎を見つめている。
 細い指がスプーンをとり、パフェのアイスをすくって小十郎の口元へ運ぶ。少し嫌がるようなそぶりの小十郎に、ぱっと弾けるように笑ったその表情が、稚く可愛らしい。
 可愛らしい、が。
「おいおい片倉サンよぉ!てめぇそれ犯罪じゃねーか!」
「今すぐ起訴してやるゆえ、弁護士バッジを置いていけ」
「あ゛ぁ?」
 思わず駆け寄って絡んだ元々コンビに、天晴れなメンチ切りを披露した弁護士は、こちらを認めて大きなため息をついた。めんどくせぇ、と失礼なつぶやき付である。
「そこの少女、そなた片倉に横暴な関係を強いられてはおらんだろうな」
「毛利コラテメー、横暴な関係って何だ」
「まさか妹です★なんて下手な言い逃れしねぇよなぁ、片倉弁護士よぉ?」
 今にも手錠を持ち出しそうな勢いで詰め寄る元親の顎を叩いて、小十郎は驚いてきょとんとしている少女の右手をそっと持ち上げて見せつけた。
 薬指に光る、繊細な造りの指輪。

「これが見えねぇのか。妹なんかじゃねぇ、正々堂々婚約中の恋人だ」

 どや顔の小十郎に、少女はぽぽっと赤くなってうっとり見惚れている。二人にとっては小憎たらしい限りの男だというのに!
 ちょっと有能でワイルド肉食系の美形で魅惑の帝王ボイスで脚が長くて意外と垂れ目がキュートだからって!!
 のぉおん!ともんどりうって悔しがる元親を放っておいて、元就は冷静に聴取の態勢で少女と片倉を見据える。
「そなた、到底成人しているようには見えぬが、せめて18歳は越えておろうな?」
「えっ……?あの、」
 元就の、切れ長の一重で感情のこもらない、元親曰く爬虫類の目を向けられて、少女は戸惑って小十郎に視線を向けた。繋いだ手をぎゅっと握って、小十郎が立ち上がり彼女を背に庇う。
「下世話な邪推はやめてもらおうか。六法にもとるようなことはしてねぇよ」
 バチっと睨み合う二人の間に、
「あ、あの!あの、こじゅのこと、悪く言わないで……」
 小十郎の腕にぎゅっとしがみつきながらも、彼を守ろうと懸命に発せられた少女の声が割って入る。
「…………こじゅ、か」
「こじゅって呼ばれてんのかよ、鬼の片倉……」
「……てめぇら、言いふらしやがったらぶっ殺すからな…」
 知ってしまった可愛らしい二人の蜜月っぷりに、元親と元就は毒気を抜かれて、げんなりとテラスを後にした。


 元々コンビが、何となく苦いものが飲みたくなり近くのスタバでコーヒーをテイクアウトしつつ、
「これぞ鬼の霍乱よ…」
「なんか気ぃ抜けちまった。今度会ったらからかってやろうぜ」
 などと話している頃。
 件のテラスでは、
「小十郎、あれが本物の893ってやつだな!小十郎のこと付け狙ってたんだ…きっと弱みを探して脅すつもりだ!おれテレビで見たもん!」
 絶対おれが守ってあげる!パパとママにも頼まなくちゃ!と気合十分に抱きつく年下の彼女に、本当のことをいつ切り出そうか悩む小十郎の姿があった。



Midnight Lover、第三者ということで、慶次にしようか迷ったのですが、せっかくなので宴で大活躍の毛利さんに挑戦!
…結果、「二人を見てにこにこする」というより「少年法を犯してないかハラハラする」第三者になってしまいました…あ、あれー?←
でもでも、指輪を見せつけてどやぁする片倉弁護士(大人気ない笑)が書けて満足です!
少しでも気に入っていただければ幸いですvリクエストありがとうございました!